今でも甦る記憶・・・
モモコが、夏の暑い盛りに洗面台の上で過ごすようになり二階に上がらなくなった頃、よほど辛かったんだと今になって思います。
ある意味、自ら隔離された空間を確保しようとしていたのかもしれません。
彼はすでにある程度の通院を経験していたので、病院に行くことが何を意味するかということを良くも悪くも理解していた気がします。
本当に不調な時に煩わしさから解放されたい気持ちとともに、降って沸いたような運命を自分だけで引き受けようと考えたに違いありません。
若い者たちがいつも通りの日常を生きるために、何か魔物のような得体の知れないモノとたったひとりで戦う覚悟を決めたんだと。
みなさんが思う以上に彼はストイックで、利他主義者で、慈悲深いネコです。ハナやボギーのお母さんのような存在と言えるかもしれません。たぶん彼は縁あって我が家に来た時点で、やがて誰かの面倒を見るのが分かっていたのでしょう。最初は子ネコとして甘えていましたが、その後のハナやボギーとは全然違う落ち着きがあったし、ハナに対して特段の愛情を注いで相手をしていていたことはブログのエントリを見ていただければお分かりだと思います。
しかし、ボギーを迎えた時に私たち夫婦は本当に悩みました。
別に格好をつけるわけではありませんが、ボギーを正式に受け入れるまでには様々な葛藤がありました。
この暴れん坊は本当に手に負えるのだろうか・・・ ハナが病気になってしまうのではないか・・・ 今さらダメでした、と言えないよなあ・・・などなど夫婦で毎日のように話し合いました。でも最終的に家族にしよう、と決めたわけです。
間違いないのは、この子に生きていてもらわなければならない、という使命感にも似た気持ち。
そして、モモコの存在でした。
おそらく我が家がハナしかいない環境だったら、里親に手を上げることはなかったでしょう。
ボギーは相性を選ぶようなネコではありませんでした。生きようとする猛烈な本能があるだけで、自分の「生」を満たすためなら他に何もいらないという感じさえする状態でした。
「いやいや、子ネコなんて皆そんなもんだよ」
とおっしゃる方もいるでしょう。私もネコは初めてではありませんし、子ネコがジャレついて人や先住ネコに絡むのは普通のことです。でも違いました、ボギーは。
自分以外は全員が敵、と思えるような凄まじい攻撃を先住ネコたちに繰り出し、慣れる気配もなかったのが実状です。生々しいシーンは、mirura家のブログからこちらに見に来ておられる方々に公開できる状況ではなく、正直あたりさわりのない写真をアップするしかありませんでした。本当のことです。
でも、このあたりをきっかけに「もしかしたら何とかなるかも」と思い、OKしたのでした。
例えばこれを見ていただければお分かりのように、ネタとして会話をつけましたが、実のところ見ていられないくらい激しく絡んでいた日ばかりでした。そんな中、じっと我慢してやらせていたモモコ。
こうして格闘しながら、しばらく後のエントリで「ボギー、行くとこ間違ったかも」という心ないコメントを見てとてもがっかりしたのを覚えています。「なんでブログなんか更新してるんだろう」と。
モモコがいなかったら、ボギーが家族になることはなかったかもしれません。いや、なかったでしょう。
半ば「うつ」状態だったハナを慰め、少しずつネコたちのコミュニティを形成していったことで、当然のごとくリーダーの役割をこなしていったのはご承知の通りです。ホントに素晴らしいネコでした。
洗面台で鼻血を出した段階で、きっと後戻りできないくらいの症状だったのでしょう。
自分の運命を悟り、弟たちへのメッセージとして洗面台での暮らしを見せて、『ワシにかまわんと、おまえたちで仲良うせえ』と言いたかったのでしょう。そんな気がします。
最後の日、死に向かいつつあるモモコの前で、そんな思い出は一つも浮かびませんでした。ただ、苦しみから解放させたい、それしか私の頭にはなかったと思います。
今、私たちはみなさんに感謝しています。
なぜなら今、二代目モモコの時に味わった罪悪感と喪失感による苦しみを同じように背負わずに済んでいられるのは、みなさんの多くの暖かい言葉があったからです。
どれくらい心強かったか、どれくらい励まされたか・・・
ブログをやっていて本当に良かったと思いました。
ありがとうございました