Wynton Marsalis Live at Blues Alley

どうでしょう、決定版と言っていいと思います。トラディショナルジャズへのリスペクトが頂点に達し、有り余るテクニックを思う存分発揮した天才ウィントンの最高傑作です。

ワシントンD.C.にある「Blues Alley」に行ったのは1990年頃だったと思いますが、私が観たのは organ の Joey DeFrancesco のグループと、失念してしまった驚異的な女性 vocalist でした。それより、本作のライブがここで行われていたことを思うと感慨深かったのを思い出します。

彼の故郷である New Orleans に(十数回は行ってるので多少ガイドできます)「Snug Harbor」というクラブがあるんですが、彼のお父さん(Ellis)が定期的に出演しています。今でも活動されています。ここでは、南部のディープなサウンドがジャズだけでなく、ゴスペルのおばさんの強烈な歌声が店を壊すかのごとく鳴り響いていたりします。あの New Orleans の様々な歴史やサウンド(Second LineやCajunやZydeco)が、ジャズの優等生である Wynton のエッセンスとなっているのは間違いありません。

本作では、前半の「Juan」から「Cherokee」につながる部分を聴いていただければ、この Quartet の神髄を多少はご理解頂けると思います。盲目の Robarts による間合いを聴くだけでも鳥肌が立ってきます。やっぱりジャズは実演がいいです。その時の音と息吹きが。
レコードとCDへの移行の過渡期にあった当時(1986年)、Wynton はレコード発売を拒否してCDのみでの発売に固執したことも特筆すべきことでしょう。

Wynton Marsalis (trumpet)
Jeff Watts (drums)
Robert Hurst (bass)
Marcus Roberts (piano)

Disc: 1
1. Knozz-Moe-King
2. Just Friends
3. Knozz-Moe-King (Interlude)
4. Juan
5. Cherokee
6. Delfeayo’s Dilemma
7. Chambers of Tain
8. Juan (E Mustaad)
Disc: 2
1. Privave
2. Knozz-Moe-King (Interlude)
3. Do You Know What It Means to Miss New Orleans?
4. Juan (Skip Mustaad)
5. Autumn Leaves
6. Knozz-Moe-King (Interlude)
7. Skain’s Domain
8. Much Later

Blossom Dearie Give Him the Ooh La La

言い訳です。このサイト、基本的に名盤紹介するつもりではありません。独断と偏見に満ちたピックアップ集ですので、清きお心からのご期待には添いかねますことを予めご了承ください。

Vocalなのに「エラ、サラぢゃないのか…」というお声はあるかもしれませんが、わたくし的に思い出深い作品の、いわば『備忘録』のようなものですのでお許しください。


誰? これ という方がほとんどと思います。「ブロッサム・ディアリー」という女性歌手で、『元祖カマトト・ヴォイス』などと呼ばれます。聴いていただかないと評価しようがないので、USのamazonのサイトで視聴願います。やはり10代の後半に出会ったんですが、今でいう『萌え〜』でしたね、あの時の気持ちは。こちょばゆいです、今思い出しても。


さて、この人は New York 生まれですが、歌手になった後に Paris へ行って活動したので、フランス語がとっても上手でした。このアルバムだと、Plus Je T’enbrasse という曲でよく分かると思います。シビれます。ホントに(照;)。田舎者の高校生が毎晩聴いては『萌え〜〜』と言ったかどうかは定かではありませんが、一緒に聴いていた弟はもう少し冷静だった気がします。

残念ながら、彼女は今年(2009年)2月に亡くなってしまいました。享年82歳。合掌

Blossom Dearie – vocals, piano
Ray Brown – double bass
Jo Jones – drums
Herb Ellis – guitar

1."Just One of Those Things" (Cole Porter) – 2:03
2. "Like Someone in Love" (Johnny Burke, Jimmy Van Heusen) – 4:33
3. "Between the Devil and the Deep Blue Sea" (Harold Arlen, Ted Koehler) – 2:28
4. "They Say It’s Spring" (Marty Clark, Bob Haymes) – 3:46
5. "Try Your Wings" (Michael Preston Barr, Dion McGregor) – 3:26
6. "Bang Goes the Drum (And You’re In Love)" (David Heneker) – 3:24
7. "The Riviera" (Cy Coleman, Joseph Allen McCarthy) – 3:48
8. "The Middle of Love" (Benny Goodman, Jimmy Wallington) – 2:35
9. "Plus je t’embrasse" (Ben Ryan, Max François) – 2:31
10. "Give Him the Ooh-La-La" (Porter) – 2:41
11. "Let Me Love You" (Bart Howard) – 2:44
12. "I Walk a Little Faster" (Coleman, Carolyn Leigh) – 4:18

John Coltrane The Other Village Vanguard Tapes

10代中頃になると小遣いを貯めては上京し、ジャズ喫茶で4〜5時間ジャズのお勉強に勤しんだ後にレコード店回りをしました。
当時は、新宿の「オザワ」や「Disc Union」、電脳街になるずっと前の秋葉原では「石丸電気レコードフロア」などが中心でした。掘り出し物は「オザワ」で、品数で勝負は「石丸」でという感じ。「石丸」は、大きなフロア毎に各ジャンルで分かれていたので、〜階は全部ジャズというふうにおびただしい数のレコードで埋め尽くされ、ヨダレを拭いながら血眼になって1枚1枚抜き出しては内容をチェックしたものです。

ある時、駅前のラジオ会館の一室でジャズレコードの輸入盤市が催されるのを聞きつけ、覗いた際に見つけたのが今回取り上げる作品です。
2枚組のくせに上からプレス機にかけたようにシュリンクラップされペッタンコになり、輸入盤独特の糊のニオイを放っていました。沸き立つ思いを抑えつつ、鈍行電車に2時間余り揺られて帰宅するや固唾を呑んで針を落とした次の瞬間に全身が逆毛だったことを記憶しています。
Chasin’ The Traneの凄まじい迫力、Coltrane、Dolphyの狂気にも似たインプロヴィゼーション、怒濤のリズム隊が渾然一体となって襲いかかってきます。聞き終わった後は放心し、ふぬけのようになっていたと思いますよ、たぶん。Coltraneもくったくたになっていて目が泳いでいたかもしれません。
ライブ録音自体は既にリリースされていたものですが、タイトル通り別テイクが存在していてそれをまとめたのが本作です。興味のない人にとっては騒音でしょうね、きっと。Village Vanguardってどんなスゲェとこなんだろう? と少年は全く手がかりがないまま想像を膨らませていた頃でしたが、のちに何度も足を運ぶとは夢にも思いませんでした。

残念ながら、本作も手に入ることはないでしょう。1961年のこのライブ自体は数枚に分かれて現在でも入手可能ですが、この構成が私はベストだと思うので。

1.Chasin’ The Trane (9:51)
2.Spiritual (12:40)
3.Untitled original (18:40)
4.India (15:25)
5.Greensleeves (6:18)
6.Spiritual (20:32)

John Coltrane tenor and soprano sax
Eric Dolphy bass clarinet ( On Track 2 Only )
Jimmy Garrison bass
McCoy Tyner piano
Reggie Workman bass
Elvin Jones drums

Recorded Nov 2,3,4,5, 1961 at New York City

Chick Corea Return To Forever

なんだ、メインストリーム・ジャズはどうしたんだ?
と言われそうですが、今しばらくお待ちを。

例えば、政権が変わるというような待ち構えて行われる変化には、人は順応というかそれなりの対応ができると思いますが、予想しえない変化には拒否反応を示す方も多いようで。

この Return To Forever は、ジャズ愛好家にとってはまさに賛否両論、ボロくそ派と待ってました派の真っ二つに分かれた作品といえます。

まず第一に、Chick Corea のルーツ的なスパニッシュな味付けであり、玄人好みする難解さを極力抑えた曲調であり、Flora Purim(drumsのAirto Moreiraの奥さん)の歌い方であり、結局何もかもダメな人と良かった人に評価が分かれました。

私は、聴いた瞬間から虜になったサイドにいましたので、わぁわぁ騒ぐ人らの意見は民主主義的に「そういう考え方もありますね」という解釈というか、無視してました(笑)。理論的にどうであっても楽しめない音楽は自己満足でしかありません。

さて、本題です。例えば、「Sometime Ago / La Fiesta」の最初の印象は、私に言わせればプログレッシブロックの大作のような展開? とこういう感想でさえ『けしからん!』みたいな反動がありましたが、正直どんどんテーマを昇華しながら曲調に乗って高揚していく演奏に「どう? こういうの気に入った?」と言わんばかりの挑発的な視線を感じるところが最高です。…分かりづらいですね。

次作の『Light As A Feather』で発表される名曲「Spain」につながる大胆なラテン風味を散りばめて、Corea 自身もそれまでの代表作である『Now He Sings, Now He Sobs』のような上手なピアニストってだけではない、非凡な才能を世に見せつけた傑作です。私は今でも世界一のピアニストは Chick Corea だと思っています。
ちなみにamazonの方のジャケ写ではなく、「ECM」が中央にあるのがオリジナルです。

Bass, Double Bass – Stanley Clarke
Drums, Percussion – Airto Moreira
Electric Piano – Chick Corea
Flute, Saxophone [Soprano] – Joe Farrell
Vocals, Percussion – Flora Purim

1.Return To Forever 12:06
2.Crystal Silence 6:55
3.What Game Shall We Play Today 4:26
4.Sometime Ago / La Fiesta 23:18

チック・コリア - Return to Forever

Pat Metheny Group First Circle

人は皆、聴くだけで想い出の風景やその季節、忘れることのできない人やその時に感じたニオイまで、様々な記憶が蘇る楽曲というのが1曲くらいはあるのではないでしょうか。私にとっての First Circle という曲もそういった存在です。

Pat Metheny は たぶん、自分が本当にやりたい音楽だけを作って商業的にも成功している数少ないジャズミュージシャンの頂点でしょう。彼が大きな成功を収めたのは、David Geffen のレーベルに移籍してからとなりますが、ECM での最後の録音となる本作が私は最高傑作の本命,移籍後の「Still Life (Talking)」は作品としては別格というか、もはや奇跡です(いずれPick Up予定)。

どうしてこんな純粋に心に響く曲が創造できるのだろう、という言葉ですべてを言い表せますね。ECM レーベルの個性である透明感のあるナチュラルな空気感、彼の楽曲に共通する牧歌的な詩情あり、2.や表題曲に感じられる独特の躍動感は Pat Metheny たるゆえんなのです。聴くたびに心に染み入ってくるのが分かります。

このブログのプロフィールにも書いたように、New Yorkで彼と二人で撮らせてもらった写真は私の宝物です。

1.FORWARD MARCH    (Pat Metheny)    2:47
2.YOLANDA, YOU LEARN    (Pat Metheny/Lyle Mays)    4:43
3.THE FIRST CIRCLE    (Pat Metheny/Lyle Mays)    9:10
4.IF I COULD    (Pat Metheny)    6:54
5.TELL IT ALL    (Pat Metheny/Lyle Mays)    7:55
6.END OF THE GAME    (Pat Metheny/Lyle Mays)    7:57
7.MAS ALLA (BEYOND)    (Pat Metheny, lyrics by Pedro Aznar)    5:37
8.PRAISE    (Pat Metheny/Lyle Mays)    4:19.

Arrangements by Pat Metheny and Lyle Mays

PEDRO AZNAR — voice, percussion, bells, glockenspiel, acoustic guitar (nylon), whistle, acoustic 12-string guitar
LYLE MAYS — piano, synthesizers, trumpet, Oberheim, agogo bells, organ
PAT METHENY — guitar, Synclavier guitar, sitar, slide guitars, acoustic guitar (steel string), guitar synthesizer, acoustic 12-string guitar
STEVE RODBY — bass guitar, acoustic bass, bass drum
PAUL WERTICO — drums, field drum, cymbal

 

SHM-CD

The Three

レコードで手に入ったのが、80年代初めまで。CDに至ってはリリースされていたことも気づかなかったほどです。とにかく、Satin Dollが絶品です。私のこの曲の絶対的な基準はこのアルバムなので、これと同等か、これより劣るかしか他にありません。

なぜ、これほどまでに優れた演奏が評価されないのかが不思議でなりません。世のジャズ通と自称する方にハッキリと進言します。これ聴いてください。

とはいうものの、現在はおそらく入手できません。CDリリースも僅かな期間で今でも in store なところはないでしょう。

私は、LPは持っていましたが遙か昔に人手に渡り、たぶん20年くらいは寂しい思いをしていましたが、幸いなことに最近になって中古盤CDをマーケットプレイス経由で手に入れることができました(送料込みで2,840円)。

セカンドカットのようで、各曲の頭に少しノイズが乗るんですが、それでもあの素晴らしい演奏が聴けるだけで何も言うことはありませんでした。もし、どんな形でも手に入る可能性があったら、必聴です。これもEast Windの作品です。

Joe Sample (Piano)
Ray Brown (Bass)
Shelly Manne (Drums)

Recorded Nov. 28, 1975

Side A
1 Yearnin’  (Nelson)  5:08
2 On Green Dolphin Street  (Kaper, Washington)  5:19
3 Satin Doll  (Ellington, Strayhorn, Mercer)  5:43

Side B
1 Manha Do Carnaval  (Bonfa,Maria, Llenas)  6:02
2 ‘Round About Midnight  (Monk, Williams, Hanighen)  4:37
3 Funky Blues  (Sample, Brown, Manne)  5:13

Singers Unlimited Christmas

もう今年は間に合わないかもしれません。このアルバムは、私の大好きなア・カペラグループのクリスマスソング集です。

初めて聴いたのは、12歳頃でしたか 確かラジオで流れていたと記憶しています。その時に耳に入ってきた『Silent Night』がそれまでお馴染みだった「きよしこの夜」とは圧倒的に違うことを田舎のガキんちょは思い知ったのでした。

細部まで計算し尽くされたコーラスと荘厳ささえも感じさせるアレンジ。宗教的なバックボーンなしに聴くのが憚れるくらい気後れしてしまった印象を今でも覚えています。

高校生になって、裕福な友人宅で高級オーディオにコンデンサ・ヘッドホンという組み合わせで聴かせてもらったことがあります。まるで大聖堂にいるかのような効果に頭がクラクラするようでした。

とにかく、ご存じでなかったら一度お聴きください。こっそり季節外れにヘッドホンで聴きたくなる私の気持ちがお分かりになるはずです。iTunesで購入できます。

Christmas - The Singers Unlimited

Great Jazz Trio At The Village Vanguard Vol.1

高校時代、それまで名盤を聞き込むことに時間を費やしてきた中で、臨場感というものを味わうような音に巡り会わなかったわけではありませんでしたが、Rudy Van Gelder による Englewood Cliffs でのリバーヴの効いた Blue Note レーベルのサウンドこそがジャズや! ファンキーや! ハードバップや! と思い込んでた耳に、ライブ録音の新鮮な躍動感がいかに爽快な青春のカタルシスをもたらすか、を実感したアルバムがこれです。

GJTの誕生は、鯉沼さんを始めとした EAST WIND レーベルの吟味の結晶であり、日本発の日本人が愛してやまないジャズ製作の形として日米の一流ミュージシャンを起用した極めて完成度の高い演奏を提供する金字塔となった企画でした。

後年、私が運営に携わったジャズクラブに Hank Jones が出演してくれた際に言っていた、
「70歳を過ぎた今も、1日練習をサボると自分で分かるし、3日やらないと妻が気づく。1週間だとお客さんに分かってしまう」
という言葉。そんな信念をもって音楽と向き合っているんですね。

Parkerの1. のっけから『ピアノトリオ斯くあるべし』といえる好演となっています。

Hank Jones  (Piano)
Ron Carter  (Bass)
Tony Williams  (Drums)

Recorded Feb. 19-20, 1977

1 Moose the Mooche  (C.Parker)
2 Naima  (J.Coltrane)
3 Favors  (C.Ogerman)
4 12+12  (R.Carter)

ザ・グレイト・ジャズ・トリオ - アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード

伝えたい音

中学生時代からのジャズ好きが高じて、後にジャズライブハウスを運営したり、ミュージシャンのマネージメント等も手がけることになりましたが、そうした時代から幾年月…

今では何が流行っているのか、業界はどうなっているのか、はたまた偉大なあの人はまだ生きているのか、ほとんどわからないまま。
『そんな古くさいの、どこがいいの?』
かもしれないけど、やっぱり今時の世の音楽に身を委ねる気になれない。

何であんなに真面目に音楽に向き合っていたんだろう、何をもってあれほどの情熱を注ぐことができたのだろう?

今では、TVでもFMでも、そんな私たちの疑問や欲求に応じてくれる場所はない。ネットで探す? ありかもしれないけど…

だったら、作ろうぢゃないか そんな人たちが幸せになれる場所を。そして、幸せになれる音楽を紹介しあえることができたら…

以上、えらそうな主旨ですが少しづつ内容を充実させていこうと思います。