この人の場合、何から取り上げていっていいのか苦労します。今回は悩んだ結果、こうなりました。
このアルバムも、ず〜〜と絶版になってました。売れる売れないとかでなく、版権などの大人の事情なんかもあるんでしょう、きっと。でもですよ、Rockで例えれば Allman Brothers Band At Fillmore East や Deep Purple Live in Japan のような(ちょっと違うか)ものなのに、Jazzの世界ではすぐ廃盤になっちゃうんですよね。納得いかない。(?ONY系のレーベルに多いぞ!)
言いたいことは山ほどありますが、ご紹介を。本作は、あの映画『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer’s Day)』の舞台にもなった、Newport Jazz Festival の1976年のプログラムの1つとして録音された作品です。ちなみにご存じでない方のためにこのジャズフェスのことを少し。
Newport Jazz Festival は、米国ロードアイランド州の避暑地で行われていた世界最古の Jazz の野外イベントで、pianistだった George Wein という人が社交界のお金持ちの援助を受けて1954年に始めたものです。数々の名演の舞台になりましたが、個人的には野外のジャズフェスというのは所詮「お祭り」的で、あまり心に響くような演奏は期待しにくいものという思い込みがあります(例外あり)。そしてその後、フォーマットの拡張という名目で集客やスポンサーの意向もあって1972年に一度 New York City へ開催場所を移します。本作もこのタームに行われたもので、New York City Centerでのライブとなっています。
模倣した野外フェスが増えていき、先見の手腕を評価された Wein は調子に乗って「リゾートでやるのが一番」と今度は同じNYの Saratoga に場所を移し、さらに日本の斑尾でも興行を行うという大活躍。この時期が野外のジャズフェスの全盛期と言えます。
目玉を失った本家 Newport は、もう一度夢を見たいがため 1981年にイベントの場所を元へ戻します。その後は Wein もメディア会社へイベント自体の興行権を譲渡し、すっかり目立たない存在に落ちぶれました(その後JVC Jazz Festival という名称でNYCにて開催)。
さて、本作は1976年開催のプログラムとして、Hancockの音楽的軌跡をサマライズする目的で組まれたのですが、Miles Davis 時代は外せないため Davis を招聘したかったがもちろん叶わず、そんぢゃ Freddie Hubbard でということで決まった前半と、Julian Priesterらとの Sextant時代の中盤、さらに Wah Wah Watson や Ray Parker Jr. らとのユニットでFunk全開な後半の3つから構成されています。なんといっても圧巻は前半最後の「Introduction of Players」から「Eye of The Hurricane」へのくだりです。Hancock によるスリリングなメンバー紹介は、これだけでひとつのエンターテインメントといえるほどの興奮をもたらす最高のスパイスとなっています。そして元祖神童 Tony Williams による信じられない圧倒的な Drumming! それまで、「Fore and More」あたりでスゲェ〜と思っていた印象を一気に吹っ飛ばす最強の演奏に思わず息を呑みます。そして、同じくメンバー紹介からカッコいい後半の「Hang Up Your Hang Ups」へとなだれ込みます。今の若い方々はこの曲を聴いてどう思うんですかね? 私なんか今でも悶絶しそうになるくらい「カッコいい〜」となりますけど。なんか、書いてたら聴きたくなったので聴きながら書きますね。
とにかく、内容的も盛り沢山ですが演奏が素晴らしいので Hancock のおすすめ作品ではこれを外すわけにはいきません。この頃、折からのCrossoverというか後のFusionブームが到来して電子楽器が主流に躍り出ようとしている時期でしたが、ここでの Miles Davis Quintet のトリビュートがきっかけで、それまでElectricへ傾斜を深めていた Hancock がAcousticなサウンドに回帰したこともその後のJazz界にとっては良かったのかもしれません。
Bass – Ron Carter (1-4) , Mchezaji Buster Williams (5-7)
Drums – Tony Williams (1-4) , Jabali Billy Hart (5-7) , James Levi (8-9)
Electric Bass – Paul Jackson (8-9)
Electric Piano [Rhodes, Yamaha Electric Grand Piano], Clavinet [Hohner D6] – Mwandishi Herbie Hancock (1-3)
Electric Piano [Rhodes, Yamaha Electric Grand Piano], Synthesizer [Arp Odyssey, Arp String Ensemble], Clavinet [Hohner D6], Synthesizer [Micro-moog, Oberheim Polyphonic Synthesizer, Echoplex, Countryman Phase Shifter, Cry Baby Wah Wah] – Herbie Hancock (8-9)
Electric Piano [Yamaha Electric Grand Piano] – Herbie Hancock (1-4)
Flute [Alto] – Mwile Bennie Maupin (5-7)
Guitar – Ray Parker Jr. (8-9)
Guitar, Synthesizer [Maestro Universal Synthesizer System, Maestro Sample & Hold], Talkbox [Voice Bag] – Wah Wah Watson (8-9)
Percussion – Kenneth Nash (8-9)
Saxophone [Tenor, Soprano] – Wayne Shorter (1-4)
Saxophone [Tenor, Soprano], Lyricon – Bennie Maupin (8-9)
Trombone [Tenor, Bass] – Pepo Julian Priester (5-7)
Trumpet – Freddie Hubbard (1-4)
Trumpet, Flugelhorn, Effects – Mganga Eddie Henderson (5-7)
Producer – David Rubinson
Recorded on June 29, 1976
1. Piano Introduction 4:32
2. Maiden Voyage 13:18
3. Nefertiti 5:17
4. Introduction Of Players/Eye Of The Hurricane 18:35
5. Toys 14:00
6. Introductions 1:47
7. You’ll Know When You Get There 7:00
8. Hang Up Your Hang Ups 11:54
9. Spider 10:12