Manhattan Jazz Quintet

これも懐かしい今から25年ほど前の企画モノ作品です。Great Jazz Trio などと同様に日本発の、というか日本向けに企画されたユニットとしては最も成功したと言えるかもしれません。7,000枚で御の字の Jazz アルバムで、15万枚売れたとか。それを証明するかのように、うるさいファンにはそっぽを向かれたのも事実です。

キングレコードの川島重行さんという producer による発案で生まれたこのユニットが、録音に臨むにあたっての話がスゴイです。

1984年のある夏の夜、New York のスタジオに売れっ子のミュージシャンが忙しいスケジュールの合間を縫って集まってきます。リーダー格である David Matthews が事前に選曲された譜面をメンバーに渡していき、楽器をセッティングしながらそれぞれ楽曲のイメージを頭に描いていきます。午後8時に全員が揃ったところで、早速 Matthews がアレンジした各曲の録音が始まりました。と、あれれ時計が0時を差したあたりで彼らは笑みを浮かべながらスタジオを後にしていきました。

というものです。何とも『プロ』の仕事とはさもありなん、と思わざるを得ない強烈なエピソードですね。その結果が本作なのです。内容的には、ひんやりとした piano や間を大事にしたアレンジによって『白っぽい』Jazz という印象ですが、17歳という若さで参加している Charnett Moffett の bass が思いがけず饒舌なラインを奏で、Steve Gadd もポップな感覚を封印してストレートアヘッドな演奏に徹していながら、やっぱり Gadd だなぁと思わせるあたり、さすがです。Sweet Basil で Gil Evans の Monday Night Orchestra のライブを見た時にすぐ間近で演奏していた Lew Soloff の trumpet もハイノートも惜しまずに圧巻のソロを繰り広げています。まぁ、Jazz の深みとかはこの際目をつぶって、ですが。そもそも 1.は『枯葉』だったらしいんですが、リハなしで本番に入ったら、『Summertime』になってて時間もないのでそのまんま行っちゃったらしいです。

このユニット自体がうまくいき、アルバムが立て続けに発表され、最近でもCDリリースや興行に乗るという有り様には少々苦笑いしたくなる面もありますが、本作の再発後はクレジットに川島さんの名前が無くなっていたりと大人の事情はよく分かりませんけど、当時の Jazz ファンを増やしたということは間違いないと思います。

Lew Soloff (tp)
George Young (ts)
David Matthews (p,arr)
Charnett Moffett (b)
Steve Gadd (ds)

1. Summertime 8:57
2. Rosario 3:07
3. Milestones 8:24
4. My Favorite Things 9:21
5. Airegin 5:40
6. Summer Waltz 4:26

マンハッタン・ジャズ・クインテット - マンハッタン・ジャズ・クインテット