喰わず嫌いな方へ Weather Report の理解を深めていただきたく、特集をしていきたいと思います。その1は、1983年発表の本作にしました。
前作を最後に Jaco Pastorius、Peter Erskine による最強のリズム隊を Bailey、Hakim という若手に替えた新生メンバーとなって、熱心なファンが手ぐすね引いて待つ中で発表された作品となりました。なにしろ、数々の伝説を残した Pastorius が抜けた穴をどんなヤツが埋めるんだとギラギラした眼差しで迎えられた Bailey(当時22歳)も、Erskine に替わる Hakim(当時23歳)も大変なプレッシャーだったと本人たちが認めています。
Omar Hakim はその頃すでに第一線で活躍していたのですが、オーディションなしに Zawinul から「ウチに来い」と言われ、有頂天になって母親に「やった、夢が叶った!」と報告するくらい嬉しがったと言います。Bailey も Hakim が決まった後に共演したデモテープを Zawinul が聴いてOKが出たという幸運によって加入したのでした。
さて、本作の特徴はそれまでの Weather Report にさらに超強力な鉄壁のリズムセクションを補強し直したという印象とともに、Zawinul や Shorter がいつになく激しい演奏を繰り広げた感があります。当時最初に聴いた時は「ずいぶん変わったなぁ」と思ったものですが、やがて聴き込んでいくうちに 3.Two Lines の洪水のようなサウンドが全身に潜むマグマを一気に噴出させてしまうかというくらいの圧倒的な迫力で、自然と流れ出てくる涙をぬぐうのが精一杯になるほどの感動を覚えるようになりました。しかし、実は 1.の表題曲から周到に仕組まれた流れに乗らないと、このような体験にならないということが段々明らかになっていったのです。
そして、Manhattan Transfer が加わった Where The Moon Goes もクライマックスに至るまでの計算された流れに乗りさえすれば、思わぬ感動を得ることができる非常に聴く者の受容力を試される作品と言えます。
Joe Zawinul: Keyboards and synthesizers
Wayne Shorter: Tenor and soprano saxophones
Omar Hakim: Drums, guitar and vocals
Victor Bailey: Bass
José Rossy: Percussion and concertina
Manhattan Transfer: Vocals (on “Where The Moon Goes” only)
1. Procession 8:41
2. Plaza Real 5:30
3. Two Lines 7:42
4. Where the Moon Goes 7:49
5. Well 4:00
6. Molasses Run 5:50
うわあ、これも全然知りませんでした…というか、知らない事の方が多いのでもうここに来ても驚かないのですが(笑)。
Jaco去りし後の新生ウェザー、新規参加の二人のプレッシャーは本当に相当なものだったでしょうね。かつてカシオペアの初代ドラマーが『下手だから(ホントかよ!)』という理由でクビになって、それから何人か頻繁に入れ替わっていたのとちょっとダブりました。拮抗した実力と、作り出すものの感性をお互いが許容・受容できるか と言ったこととか、本当にセンシティヴな線上でしのぎを削って作り出される音なのでしょうね。
そして、聴く者の受容力を試す作品とは!
後でまたYou Tube散歩してみましょうかねぇ。
でも、ずっぽりハマってごはんが作れなくなったりしても困るので、お母さんは常に自らを牽制しております、こんなんでも(爆)。でもManhattan Transferも参加なのですね…ああ、聴いてみたいなぁ~、クリックしちゃおうかなぁ(意志薄弱)。
シュール・リーさん
生意気なことを申し上げました。しかし、これを最初に聴いた段階で魅力のすべてが理解できる人っていないと思うんです。
Zawinul が、「Hakim と Bailey なしでは作れなかった」と言っている本当の意味も。