Weathre Report 特集の三回目は、1973年発表の Sweetnighter をご紹介いたします。彼らを彼らたらしめる非常に重要なターニングポイントとなったアルバムです。
Zawinul は、「これは世界で最初のヒップホップ音楽だ」と公言しています。1.Boogie Woogie Waltz こそ私がこのバンドのベスト3に選ぶ名曲中の名曲なのですが、この頃のバンドには大きな転換期が訪れていたことも作品に影響を与えています。
これまで、先鋭的な Jazz のエキスパート集団として活躍してきた彼らが、Miles Davis らが指し示した音楽の方向性や Free Jazz の独創性を手放すことなく、より商業的にもアピール可能な道を無駄な妥協をせずに達成するにはどうしたら良いか、という難題に取り組んだ最初の成果がこの作品に結集しているからなのです。
そうした Zawinul の構想には犠牲が伴ったことも事実で、Vitous や Gravatt のような才能溢れたメンバー達に「これも Jazz なんだ」と説得しつつも、最終的には共鳴を得られずに袂を分かつきっかけにもなってしまいました。Gravatt の代わりに作編曲家であり NY のスタジオ運営をしていた Herschel Dwellingham に一時的なトラを頼み、bass には English Horn を始めとするマルチプレーヤーで前作「I Sing The Body Electric」や Fifth Dimension の録音などに参加していた Andrew White III を招いて録音するという状況の中で生まれたのが本作です。
後の Funk 音楽すべてに共通するようなビートやメロディライン、決して置き去りにされない自由なソロ空間など、Weather Report でなければ到達できない音楽世界を創り出していることが、このアルバムをより重要な位置づけとしなければならない理由です。このあたりを咀嚼せずに「Black Market」以降に出会うと単なるポピュラー音楽としての評価しかできない耳になってしまうと私は思っています。
Josef Zawinul: Electric and acoustic piano, synthesizer
Wayne Shorter: Soprano and tenor sax
Miroslav Vitous: Electric and acoustic bass
Eric Gravatt: Drums (tracks 2, 4 and 6)
Dom Um Romão: Percussion
Maruga: Percussion
Andrew White III: Electric bass (tracks 1, 4 and 6), English horn (tracks 3 and 5)
Herschel Dwellingham: Drums (tracks 1, 2, 3 and 6)
1. BOOGIE WOOGIE WALTZ 13:03
2. MANOLETE 5:55
3. ADIOS 2:59
4. 125th STREET CONGRESS 12:13
5. WILL 6:20
6. NON-STOP HOME 3:52