Steely Dan Gaucho

メインストリーム寄りが続きましたので今回は趣向を変えましてスタジオサウンドの究極の見本のようなアルバムをピックアップしてみました。Jazz という枠で括ることができるかは聴く人次第です。

都会的で粋でオサレな音楽は巷にたくさん溢れていますが、これほどのミュージシャンが参加し、一聴して誰それの演奏なのか分かりつつ、楽曲として100%完成されているものは金輪際ないといってよいでしょう。例えば、アメリカ国内でよくいう”Smooth Jazz”や一部の”Black Contemporary”、David Fosterに代表される”AOR”とかに共通するのは、「都会的でセンスが良くて必ずキュンとするサビがある」といったものでしょうか。でもどれを聴いてもみんな同じに感じるのは私だけではないと思います。
決してそれらをけなしている訳ではありません。けど、どうも「量産」が可能なものも少なくない(一定の法則に従えば出来上がる)ような気がするなぁという意味ですが。

さて、Steely Dan というユニットは、Donald Fagen と Walter Becker の二人を中心に、1970年代前半のデビュー当初は普通のバンドとして活動を始めています。しかし二人が完璧な楽曲の創造に重きを置きすぎて、一般的なレコードアーティストの活動である「アルバム制作」→「コンサートツアー」というサイクルを是とせず、結局彼ら二人の曲を理想的なミュージシャンやエンジニアたちを起用することによって制作し作品を発表することのみに集中していったため、ライブはやらない奇妙な形態になっていきました。当然バンドメンバーは居場所がなくなり、Fagen と Becker によるレコーディングユニットが Steely Dan という総称によって、マーケティング的には作品のクレジットに表示されるという図式となっていったのです。とはいえ、その間には Jeff Baxter(g) や Michael McDonald(key) らのような著名なミュージシャンが Steely Dan への参加によってそのサウンドのエッセンスを継承していきました。

本作はキラ星のごとく輝くスタープレーヤーたちの共演というだけでなく、前述した食傷気味になるような迎合性ともほど遠い、今でも新鮮な感動を与えてくれる名曲の宝庫です。前作『Aja』のように、たった数小節のソロパートのためにだけ Wayne Shorter に吹いてもらうという芸当を、必要とあらば惜しげもなくやってしまえる部分は本作にも当てはまっており、制作期間2年半、総制作費も100万ドル近いという化け物のような作品となっています。

WALTER BECKER — bass, guitar, solo guitar
DONALD FAGEN — lead vocals, electric piano, synthesizer, organ
STEVE GADD — percussion
STEVE KHAN — electrc guitar, acoustic guitar, solo guitar
LESLIE MILLER — backup vocals
ROB MOUNSEY — horn arrangements, piano, synthesizer
TOM SCOTT — tenor sax, alto sax, clarinet, lyricon, horn arrangements
VALERIE SIMPSON — backup vocals
Wayne Andre — trombone
Patti Austin — backup vocals
Crusher Bennett — percussion
Michael Brecker — tenor sax
Randy Brecker — trumpet, flugelhorn
Hiram Bullock — guitar
Larry Carlton — solo guitar
Ronny Cuber — baritone sax
Rick Derringer — guitar
Victor Feldman — percussion
Frank Floyd — backup vocals
Diva Gray — backup vocals
Gordon Grody — backup vocals
Don Grolnick — electric piano, clavinet
Lani Groves — backup vocals
Anthony Jackson — bass
Walter Kane — bass clarinet
Mark Knopfler — solo guitar
George Marge — bass clarinet
Nicholas Marrero — timbales
Rick Marotta — drums
Hugh McCracken — guitar
Michael McDonald — backup vocals
Ralph McDonald — percussion
Jeff Porcaro — drums
Bernard Purdie — drums
Chuck Rainey — bass
Patrick Rebillot — electric piano
Joe Sample — electric piano
David Sanborn — alto sax
Zack Sanders — backup vocals
Dave Tofani — tenor sax
Toni Wine — backup vocals

1. BABYLON SISTERS 5:51
2. HEY NINETEEN 5:04
3. GLAMOUR PROFESSION 7:28
4. GAUCHO 5:32
5. TIME OUT OF MIND 4;10
6. MY RIVAL 4:30
7. THIRD WORLD MAN 5:14

高音質なDVD Audioバージョン

Steely Dan - Gaucho

9件のコメント

  1. あれは、1972年。中学2年のガキンチョの頃、
    湯川れい子さんの名調子、全米トップ40で聴いた
    Steely Dan の Do It Again に KOされて以来、
    彼らには何度もKOされてきました。
    学生の頃はまだアルバムを買うなんて事は考えたもしなかったので、
    もっぱらシングルカットされた曲をラジオで聴いていたわけで、
    AjaやPegはもちろんですが、一番のお気に入りはRikki Don’t Lose That Numberで
    次はReeling The Yearsだったりします。
    初めてAjaをアルバムで聴いた頃、
    萩尾望都が漫画にした、かの「百千」に「反宗教的」電撃を受け
    全く同時に聴いていた Black Cow を聴くと「百千」をイメージし、
    「百千」を読むと Black Caw が頭を駆け巡るという異常状態も生み出しました。
    そして、Steely Dan というグループ名の由来であるバロウズの「裸のランチ」も
    映画化されて見た映像の倒錯の世界を思い出します。
    一点残念に思っているのは、Steely DanにはMichael McDonaldが
    もっとかかわってほしかったという事です(これには反対意見も多いですね)。

  2. そらみみさん
    私も Michael McDonald については同意見です。でも、同じように大好きな Doobies への参加が遅れていたら、それはそれで困ったことになっていたかも・・・ と思うと複雑ですね。

  3. Doobies は Michael McDonald が引っ張っていた期間のほうが
    長くふれていたのですが、一番好きな曲は参加する前の Black Water、
    次にAnother Park, Another Sunday です。
    後者は Steely Dan の雰囲気があります。
    Michael McDonald が参加してから一番好きなのは、
    How Do The Fools Survive? 次に It Keeps You Runnin’ です。
    好みの偏り具合が判りますね。

  4. アマゾンをさまよっていて、4年「も」前に Donald Fagen がソロアルバム
    を出しているのを知りました。「Morph The Cat」というアルバムです。
    Fagenのソロには特に変化を感じなかったのですが、バックの演奏が素晴らしい!
    「Aja」や「Gaucho」や「The Night Fly」や「Two Against Nature」に
    足りなかったものが、ここには確かにあります。
    バックバンドやバックコーラスが完全に楽曲を理解している感じです。
    Steely Dan の意思を継ぐものがしっかり育っているのだと思いました。

  5. そらみみさん
    Morph The Cat 聴いてみました。そらみみさんの仰っている意味がよく分かります。
    私としては、The Nightfly の方が好きですが、要するに Keith Carlock の drums の生々しさとか、それを含めた Band としてのまとまり感とかがすごく感じられます。Fagen は Steely Dan を始めた当初は歌うのを躊躇していたなんて話もあるんですね。
    ビデオはキャプションに2003年とありますが、私この頃に新譜のライブ盤を買った覚えがあります。今探したけど見つかりません。必ずどこかにあるはずなので後で確認してみますが、その時のものではと。
    それとは別に1996年7月21日の Virginia でのライブは2枚組のDVDを持っています。

  6. The Nightfly、私も大好きだったのですが、最近聴かなくなっていたのです。
    楽曲の瑞々しさは間違いなくThe Nightflyが勝っていますね。
    Two Against Natureは何度聴いてもピンときません。
    1996年のライブ映像見てみたい!もう手に入れるのは難しそうですね。

  7. Steely DanはAja聞いて速攻アルバム買いました。で、一番好きな曲はDeacon Bluesかなぁ。DoobieはLongtrain Runninの頃が好きで、MichaelはI keep forgettin’が好きで、Do it againも良いですが一番好きなのはkenny Rogginsと共演したThis is itかしらん。で、Michaelソロだと歌い方がネチっこくて飽きると言うか疲れるんで、やっぱ誰かと組んでた方が良いですねぇ。とかとりとめの無いコメントですみません。

  8. ikaさん
    Michael McDonald は他のアーティストの作品でも、バックコーラスに参加しているとすぐに分かりますよね。Patrick Simmons の「So wrong」とか、TOTOの「I’ll be over you」とか、独特のやや太めのハイトーンが混ざるとコーラスが少し大袈裟になります。
    それが得も知れぬ効果になってキュンとさせてくれるところが不思議です。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です