ちょっと例外となってしまいますが、新しめの作品をご紹介することにしました。ただし、元々は30数年前の幻のグループなのでご容赦ください。
以前ご紹介した「Blue Montreux」から遡ること数年、Mike Mainieri を中心とした L’Image というユニットが実際に存在したことがありました。レコード自体は残っていませんが、本作の bassist である Tony Levin を除いて全員がそのユニットに参加していたのです。当時の Jazz 系のファンならば絶対に聴いてみたい競演でしたが、音源がないので短命だったユニットについて恨めしく思ったものです。
割と思いつきと思われる復活のようですが、多分そうでしょう。「なるほどねぇ、このメンツならそこそこやるだろうけど・・・」という第一印象を持たれる往年のリスナーも多いのではないかと予想できます。私もその例に漏れず「ずいぶんトシだし、大丈夫かしら」と心配しながら聴いてみました。
そこかしこのレビューで見受けられるのは半々の割合で肯定・否定の論評ですが、個人的な意見を申し上げると
『最高の買い物をした』
と宣言いたします。
死ぬ前に聴くことができて本気で良かったと思える出来と言っておきましょう。一曲目もラストも懐かしいナンバーだし、よく知っているのにも拘わらず、この平均年齢が70歳になんなんとするジジィたちによって醸し出されるアンサンブルの巧みさとノリの良さはどうでしょう。特に guitar の David Spinozza のアブラの乗り切った演奏に完全にヤラれました。リズム隊の安定感は当然抜群な上、Mainieri も Bernhardt も期待を大きく上回る好演を繰り広げて最近の一番のお気に入りに文句なく入れさせていただきました。Levin の Stick は芸術ですね。
P.S. ちなみに、iTunes Store のレビューを書いたのは私です。
Mike Mainieri(Vib)
Warren Bernhardt(Key)
David Spinozza(G)
Tony Levin(B,Stick)
Steve Gadd(Ds)
1. Praise 9:33
2. Reunion 5:34
3. Gadd-Ddagit! 5:01
4. Doesn’t She Know By Now? 6:08
5. The Brat 5:46
6. All in a Row 3:55
7. Hidden Drive 4:52
8. Love Play/Coming Home 10:38
おいしそうなので食べてみます
そらみみさん
これはお口に合うんぢゃないかと思うんですが・・・。
私は嬉しいです。こういうのをこの人たちが今時やってくれること自体が。
いただきました!
ライトで上品なお味(Mike Mainieri・Warren Bernhardt・Steve Gadd)と
ヘビーでこってりなお味(David Spinozza・Tony Levin)が
ごちゃまぜになってました。
この感覚が好きな方にはたまらないメニューと思いますが、
私はどっちかと言うと分けて食べたいかもしれません。
是非聞いてみたいと思ったのは、David SpinozzaとTony Levinのバトルです。
でも、ごちゃまぜの味も何度も聞いているうちにだんだん馴染んできましたよ。
以前、ひとに勧められて聞いた「ホワイトエレファント」は
その当時は拒絶反応が出てしまったのですが、
今だとちょっと違って感じるかもしれません。
あと5年ぐらいたって本当に枯れた音の彼らを聞いてみたい気がします。
ところで、Chapman Stickという楽器、その音は何度か聞いたことがある
のですが、名前も姿も知りませんでした。
一番最初に聞いたのは「Ring / The Gary Burton Quintet with Eberhard Weber」(1974)
だったと記憶していたので、見てみたのですが、
ジャケットを見てもクレジットされていないしライナーにも触れられていません。
聴きかえしてみるとEberhard Weberのその音は
やはりBassで、Chapman Stickではなさそうです。
しかし、すさまじい音ですね、Chapman Stick
ディジリドゥーを彷彿とさせる響きも感じます。
そらみみさん
Stick は、私の場合は身近な人間が演奏していたことと、後期 King Crimson でも Tony Levin が自在に操っていたことも強烈に耳に残っていて、大好きな楽器です。
以前ご紹介した「Blue Montreux」でも Levin が弾いているのは Stick です。この楽器はライブの際、ビジュアル的にも実に生えるのでもっとプレーヤーが増えていいと思うのですが、どうなんでしょうね。最近の音楽事情、まるでわかりません。
私の感覚では Stick イコール Tony Levin なので、こういうものだという確信で聴いています。
例えてみるならば、bass を竪琴にして Stanley Jordan に弾いてもらうとこんな風になるのかな、です。
Stanley Jordan も後日ご紹介したいと思います。
本作では、5.Brat の Levin のプレイがムチャクチャかっこいいですね。
何度も聴いてみると David Spinozza は硬軟自由自在なのが良く判ります。
Tony Levinは、手持ちのCDで名前を見た覚えがあったので、調べてみました。
「Union / Yes」で1曲だけクレジットされていましたが、ちょっとStickには
聞こえないのでここでは使っていなかったのかもしれません。
King Crimson はアナログ、CDとも持っていないんです。
そらみみさん
Levin の紹介ムービー
http://www.youtube.com/watch?v=SOUkl46wzHo
昨年の東京JAZZでの L’Image の演奏(残念ながら Stick 弾いてません)
http://www.youtube.com/watch?v=zxn6NwH72jk
紹介していただいたムービーをたどって、Stickの音を聞いて気づきました。
どうやら私はStickの音を勘違いしていたようです。
L’Image 2.0 でいうと「4. Doesn’t She Know By Now?」の冒頭のような
「ビョヨーン」という感じの音がそれだと思っていたのですが、
むしろギターよりの音なのですね。まだ、明確に音をつかまえられません。
耳を鍛えないと!
そらみみさん
具体的に申しますと、本作では
5.Brat
の全編にわたって鳴っている bass 音…
Blue Montreux では
1.
の音がまさに Stick です。
右手は基本的にタッピングとスライドで音を出すので、通常のピチカートやスラップ(チョッパーですな)、ハンマリングなどの奏法とは異なり、解放されない粘りけのある独特の打音が表現されます。さらに両手を巧みに使って Brat でも出てくる「プンプーン」といった不思議なスライド音が転調時に入ったりするとチョ〜かっこいいわけです。
Eberhard Weber の妙なベース音について書かれているサイトがありました。
なあるほど、です。この人もへそまがりさんですね、きっと。
http://www.geocities.jp/ecmlistener/musicians1/weber.html
そらみみさん
これまでのやりとりからして、いかにもそらみみさんが引用されそうなミュージシャンが Eberhard Weber だなぁと実感します。
ECM や Steeple Chase のような欧州ならではのサウンドも大好きです。ただ、私は New Orleans を源流とする黒人音楽を発展させた都市部の先進的なクリエーターの足跡に対して、多大なリスペクトを寄せていますので、swing 〜 bop 〜 hard bop と変遷してきた中での Jazz の歩みに即した独創性やオリジナリティを評価する耳になってしまっているのかもしれません。
私が、Led Zeppelin や King Crimson(多少議論の余地はありますが、後日論じます)、あるいは Levin 等の英国系のミュージシャンにも頷けるのは、彼らの根底に流れる Blues や Jazz の影響を感じられるからこそなのだと思います。
Led Zeppelin や King Crimsonのお話にも期待しています。
プログレは偶然(おそらく)Yesに向かってしまったので、
他にはPink Floydを除いて、ほとんど知らない世界なのです。
音楽の嗜好は生まれつきの部分もままあると思いますが、
偶然の積み重ねの部分も多く、それがまた面白いのですよね。