Michael Brecker Don’t Try This at Home

いわずと知れた Michael Brecker。誰それのあのアルバムのソロはすごいよね、とか、あのグループのライブの時の Brecker のフレーズが最高だ、とか基本的にサイドメンの仕事がこの人の音楽人生の大半を占めていたので、リーダー作(”Brothers” は例外として)が話題に上がりにくいミュージシャンの一人でした。
この人は間違いなく天才です。考えた通りの音を寸分違わず表現できるだけでなく、その膨大な経験からどんなジャンルのサウンドにも彼の音として存在感を示すことができた、歴史上でもほんの一握りしか認められない音楽家だったと思います。

本作は、実質2作目のリーダー作となる1988年の Impulse 盤で、オールスター録音だった1作目と比べるとキチンと自己バンド中心の演奏をメインに、ゲスト参加ナンバーも程よく配していて作品としての完成度は高く、後年リリースされた(1997年発表の5作目)<a href="Two Blocks From the Edgeと並んで自身名義の最高傑作と言える出来になっています。開発に協力した AKAI の EWI(Electric Wind Instrument)も使い、無国籍風のテイストを盛り込んだ1.や激しいインタープレイの5.など、通常のライブでは味わえない演奏が収録されています。個人的には、レギュラーに近い構成+ Peter Erskine 参加の7.が大好きです。sax と guitar によるユニゾンのテーマに Erskine でなければ表現できないであろう独特のレガートが得も言われぬ絶妙なコンビネーションを生んでいて比較的リラックスした小品ながら、テンションを高く維持した空気感に引き込まれます。
この時点レギュラーで当時は新人だった Joey Calderazzo がいい仕事をしており、硬軟併せ持ったプレイスタイルが他の大物からも引き合いがあったことに合点がいきます。Producer は Don Grolnick。全体的にまとまりという面では、ゲスト各々の個性も反映させているため多少の凸凹感が残るものの、私はこのアルバムへ注がれた情熱のようなものを感じることができて好きです。彼が白血病で他界してからもう4年近くなってしまいました。沢山の名演によって幾多の楽しみを与えてくれた恩人のような Michael Brecker。ご冥福をお祈ります。

Michael Brecker (ts, key, EWI)
Mike Stern (g)
Mark O’Connor (vln)
Jim Beard (p, syn)
Don Grolnick (p)
Herbie Hancock (p)
Joey Calderazzo (p)
Judd Miller (syn)
Charlie Haden (b)
Jeff Andrews (el-b)
Jack DeJohnette (ds)
Adam Nussbaum (ds)
Peter Erskine (ds)

1.Itsbynne Reel 7:43
2.Chime This 7:51
3.Scriabin 7:47
4.Suspone 4:59
5.Don’t Try This at Home 9:30
6.Everything Happens When You’re Gone 7:13
7.Talking to Myself 5:10
8.Gentleman & Hizcaine 5:20

全品送料無料キャンペーン中

iTunes Store でも購入できます

Yellowjackets Politics

どうにも自虐的笑いが止まらないのはなぜでしょう。お気に入りのアルバムをピックアップするたびに思います。なぜなら今回もすでに廃盤になっていたから。

本作は1988年度の Grammy 受賞作ですよ。大人の事情なんて全然知りたくもないですが、何なんでしょうね一体。ネット眺めても「こんなもん、まだ売ってんの?」みたいなのが多いのに、昨今の売れ線洋楽とかどうだっていいから、ちゃんとしたものを残して欲しいと思うのはワガママですかね? 何か腹立ってきます。こんなことやってるから衰退するんだと思いますね。テレビと一緒だ。

西海岸の代表的 Fusion ユニットである Yellowjackets は、1977年に Robben Ford のサポートバンドとして誕生し、どちらかというと爽やか系で売り出したのですが、ちょっとベビー Weather Report 的な曲調が混ざり始めてからは、keyboard の Russell Ferrante を中心に独特のマニアックなユニゾンによるテーマや少し R&B がかったサウンドが目立ち始め、bass の Jimmy Haslip のテクニックも相まって Jazzっぽい路線へシフトしていきました。本作は馴染みやすいメロディーとノリの良さで親しみのあるナンバーばかりですが、Jazz 的な思考は芽生えており次作の「Spin」に至ってそれが顕著に表れることになります。さらに sax がPops系の Marc Russo から Bob Mintzer に替わった1991年以降はより鮮明に進化を遂げていくのでした。本作を一言で評すれば、『Jazz がほんのり香る耳馴染みのいい技巧派サウンド』といいましょうか。Weather Report 好きな私的にはモノ足らない分、Fusion サウンドが受け入れられる方には充分満足していただける作品だと思います。むしろ、これ以降の作品になると Jazz 的なアプローチが増えてくるため、そっち側のファンでないと聴きづらいかもしれません。Ferrante の才能を知らしめた重要な作品でもあります。

Russell Ferrante (key)
Jimmy Haslip (b)
William Kennedy (ds)
Marc Russo (sax)
Alex Acuna (per)
Steve Croes (syn)

1.OZ 4:44
2.TORTOISE & THE HARE 5:32
3.LOCAL HERO 4:38
4.GALILEO (FOR JACO) 5:05
5.FOREIGN CORRESPONDENT 5:43
6.DOWNTOWN 4:02
7.HELIX 4:57
8.AVANCE 5:17
9.ONE VOICE 3:58
10.EVENING DANCE 5:10

全品送料無料キャンペーン中

Chris Rea Auberge

今回も Jazz から離れて、単純に愛聴盤ということでご紹介します。英国出身 Chris Rea の「Auberge」です。しかしながら、音を聴いてみてここで取り上げたいという気持ちを分かっていただければ幸いです。

Chris Rea のすべてを知っている訳ではないので細かい説明はできませんが、一度聴いたら忘れられないビターヴォイスと言いますか、男でもぐっとくるメチャクチャ渋い声にたぶんご婦人方はヤラれるのでしょう。『こんな声に生まれたかった!』と思うのは私だけでしょうか? いや、実はこの人は売れるまで大変苦労したそうで、そうした足跡がこの声に凝縮されているのかもしれません。

本作は1991年リリースなのでアルバム的にはデビュー後かなり経ってからの作品ですが、私的にはそれまでの「On The Beach」や「The Road To Hell」よりもハマりました。今でも『Looking For The Summer』はことあるごとに聴いてしみじみしています。ホントにいい曲です。Peter Barakanが著名になり始めた頃に、「Popper’s MTV」というテレビ番組で彼が熱烈な思いを込めて紹介していたミュージシャンでもありました。大袈裟なアレンジは一切無し、ひたすら渋い… この潔さが飽きずに聴き続けられる理由なんでしょう。新譜は入手できるかわかりませんが、是非一度聴いてみてください。おすすめです。

Chris Rea (vo,g,org,harmonica)
Max Middleton (p,el-p)
Anthony Drennan (g,dobro)
Robert Ahwai (b)
Martin Ditcham (ds)

1.Auberge 7:18
2.Gone Fishing 4:41
3.You’re Not a Number 5:00
4.Heaven 4:12
5.Set Me Free 6:55
6.Red Shoes 3:54
7.Sing a Song of Love to Me 3:34
8.Every Second Counts 5:08
9.Looking for the Summer 5:03
10.You My Love, And 5:29
11.Mention of Your Name 3:17

全品送料無料キャンペーン中

Jon Faddis Into The Faddisphere

またまたレアもののご紹介ですみません。昔から Jazz を聴く者の習性かもしれません。このアルバムをお持ちの方は果たしているのでしょうか。

Jon Faddis は、米国の National Treasure である Dizzy Gillespie の愛弟子で trumpet 奏者としては超の付くベテランです。リーダーとして自己名義の作品を多く残しているわけではないのでご存じない方もいることでしょう。しかし彼のラッパなくして世に言う名盤も生まれなかったわけで、数々の有名な録音に驚くほど参加しています。彼の信条は師匠譲りの強烈なハイノートサウンドで、本作の大半で鳴り響く、まるで草笛を大音響にしたような高音域の音色は、他の追随を許さない完璧さを見せつけています。Maynard Ferguson という人もハイノートで有名ですが、私は Faddis の方が音楽思考的に好きです。

本作は1989年の録音で、時代的に Wynton Marsalis を筆頭とした新主流派的なサウンドに近いナンバーもありますが、サイドメンはこの時点で若手の中でも飛び抜けた名手を揃えていることも見逃せません。特に女流ではピカイチだった piano の Renee Rosnes が Chick Corea ばりに冴える5.や、全編を通じて通好みなドラミングの Ralph Peterson など、かなりの聴き応えです。この中でも個人的にシビれたのは 6.Retro Blue で、導入部のクールなアレンジがたまりません。ハイノートもやり過ぎは禁物ですが、このアルバムはやり過ぎ1ミリ手前くらいで何とか成り立っていると言えるでしょう。前述のように若手の演奏の素晴らしさが光る作品として聴くに値すると思います。しかし、残念ながら現在はマーケットプレイス以外での入手はほぼ絶望的です。

Jon Faddis (tp)
Ralph Peterson (ds)
Renee Rosnes (p)
Phil Bowler (b)

1 Into the Faddisphere 6:46
2 Sambahia 5:13
3 At Long Last 5:15
4 The Early Bird Gets the Short End of the Stick 5:44
5 Many Paths (To the Top of the Mountain) 7:05
6 Retro Blue 4:38
7 Ciribiribin 7:43
8 War and Peace 3:37

全品送料無料キャンペーン中