Lee Ritenour Festival

アルバム的には季節は反対かなというイメージではありますが、あえて冬の最中に紹介いたします。イケてるリズムに乗ったアコースティック guitar サウンドを存分に楽しんでいただける作品です。

私の印象では Lee Ritenour という人は、GRP以前から Dave Grusin とずっと歩んできた Captain Fingers のままなのですが、最近は独自の色をどんどん打ち出して「Six String Theory」のような活動を始め、もはや guitar のヴァーチュオーゾ的な存在になっているのですね。渡辺貞夫さんのアルバムへの参加などで日本の方々にもお馴染みの人であり、杏里と婚約して結局は破局してしまったなんてこと知ったこっちゃないですが、guitarist としての技術は完璧で、どんな音でも思ったまま弾くことができる限られた人類の一人だと思います。

このアルバムは1988年の作品で、それまでのいかにも fusion、その後の Brasilian な路線を昇華して、Ritenour ならではのスタイルを完成させた成功作と言えるものです。
L.A.Unit、NY Unit、Brasil Unit と、それぞれ名うての地元ミュージシャンを起用しており、豪華メンバーが持ち味を充分に発揮して楽曲に厚みを与えています。1.Night Rhythms から Omar Hakim の圧倒的な drums に身を委ねることができるでしょう。そこに Marcus Miller の絶妙な slapping が絡んで、都会的な夜の風景が否応なく浮かんでくるに違いありません。出色は 2.で、Joao Bosco らの歌声とやはり Hakim による『これぞサンバだ』といえるリズムが音楽的にはかなり贅沢な空間を作り出している傑作です。いずれにせよ、純粋な Jazz と呼ぶには異論もありますが、耳にして確実に楽しいのは Lee Ritenour という人の類い希な才能がなせるものなのだと思います。

Lee Ritenour (acoustic guitar, synthesizer, guitar synthesizer)
Joao Bosco (vocals, acoustic guitar)
Caetano Veloso (vocals)
Larry Williams , Jerry Hey (strings, horns)
Ernie Watts (alto saxophone, tenor saxophone)
Dave Grusin, Bob James (keyboards)
Robbie Kondor (synthesizer)
Marcus Miller (bass guitar)
Anthony Jackson (bass guitar)
Omar Hakim (drums)
Paulinho Da Costa (bongos, percussion, bells)
Carlinhos Brown (djembe, pandeiro, percussion)
Gracinha Leporace (background vocals)

1.Night Rhythms 4:30
2.Latin Lovers 6:49
3.Humana 4:37
4.Rio Sol 5:23
5.Odile, Odila 4:58
6.Linda (Voce e Linda) 5:27
7.New York/Brazil 4:21
8.The Inner Look 5:23

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Festival - Lee Ritenour

Pat Metheny Group Offramp

先日 Parent’s Room でご紹介した Anna Maria Jopek の Metheny 共演盤でも取り上げられているナンバーの中でベストテイクなのが、「Are You Going With Me?」。そのオリジナルがこのアルバムに収録されています。

本作は ECM 時代の傑作のひとつであり、グラミー賞に輝いたことからもわかるように非常に評価も高く、いわゆる名曲も含まれています。ただ、Metheny がすべて好き放題にやった結果か、と問われれば否、producer の Manfred Eicher の好みが相当入り込んでいるサウンドになっているのです。それが手腕だということもありますが、この ECM らしい空気感というのは、「First Circle」、さらに Geffen レーベル移籍以降見事に払拭されていることから、案外居心地が良かった可能性もありつつ次の進化のためには脱皮しなければならない行程だったのでしょう。

頭から一見コンセプトアルバムかと勘違いしてしまいますが、完成度が高い目玉曲の2.から3.に至るまででイメージは一旦完結し、guitar synthe を多用した表題曲や有名な6.、「80/81」の guitar ナンバーからの続編である美しい7.など、意外とバラエティに富んだ構成になっています。このアルバムは、Metheny の音楽における重要なマイルストーンであり、Blues を源流とする Jazz guitar の歴史に対して、『今』を表現するために必要な技巧や手段を極めて分かりやすい方法で知らしめたアンチテーゼとして、今後も語り継がれていくであろう最初の極みなのです。

Pat Metheny (synthesizer, guitar, Synclavier)
Lyle Mays (piano, synthesizer, autoharp, organ, Synclavier)
Steve Rodby (acoustic & electric basses)
Dan Gottlieb (drums)
Nana Vasconcelos (percussion, vocals, berimbau)

1.Barcarole 3:17
2.Are You Going With Me? 8:47
3.Au Lait 8:32
4.Eighteen 5:08
5.Offramp 5:59
6.James 6:47
7.The Bat Part II 3:50

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Offramp - Pat Metheny Group

Emerson, Lake & Palmer Trilogy

Jazzは一休み。昨今の巷に溢れる素晴らしいポピュラー音楽については難しくてよく分からないので、目先を変えて私の少年時代のバイブルを紐解くシリーズといたします。

中学生時代、毎日のように聴いてLPが擦り切れては買い直すほど聴きまくった ELP ですが、今でも当時と全く変わらない感動を覚えます。私は正確には Beatles 世代より少し後に位置するため英国のサウンドとの出会いが彼らだったこともあり、いきなり直球勝負で来られた結果、虜になりました。最も衝撃的だったのは「Tarkus」でしたが、味わい深さの点では本作が最も優れています。1960年代以降の British Rock の魅力は、その音楽性にあります。古典音楽の素養を充分に身につけ、既存のジャンルにも関心を払いながら誰のマネでもないユニークかつ格調高い新たなサウンドを作り上げる才能が溢れていたということです。

この Trilogy における楽曲に共通して言えることは、培われた音楽観の深みでしょう。20代の若者たちがなぜこれほどまでに音楽的な熟成を成し遂げられたか、完成度の高い楽曲を生み出すことができたか。現代の音楽家たちが無数のデジタルツールを駆使してもこのような高みに到達できない理由は、出尽くしてしまったフレーズを単に組み替えていじっているだけだからなのです。すでに Charlie Parker が1950年代までに奏でたものが現代の音楽の全てである、と言い切ることもできますが、私には king Crimson を筆頭とした70年代の British サウンドが成し遂げた功績は歴史的にみても極めて重要なムーブメントだったと確信しています。

Keith Emerson (Hammond C3, Steinway piano, Moog III C, Mini Moog model D)
Greg Lake (vocals, bass, acoustic & electric guitars, lyrics)
Carl Palmer (percussion)

1.THE ENDLESS ENIGMA (PART 1) 6:37
2.FUGUE 1:57
3.THE ENDLESS ENIGMA (PART 2) 2:00
4.FROM THE BEGINNING 4:14
5.THE SHERIFF 3:22
6.HOEDOWN 3:48
7.TRILOGY 8:54
8.LIVING SIN 3:11
9.ABADDON’S BOLERO 8:13

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Trilogy - Emerson, Lake & Palmer