Kazumi Watanabe Spice Of Life
’70年代デビュー当時は「17才の天才少年」と言われた渡辺香津美ですが、暁星高校で先輩だったモト冬樹の guitar プレイからも影響を受けているというのは有名な話です。若くして天才と呼ばれる場合、大抵はどの分野でも=『驚くようなテクニックの持ち主』であることが多く、デビュー後間もなく玉を打ち尽くして忘れ去られてしまう人が沢山います。
しかし、彼は違いました。食えない Jazz の世界にあって、TVのようなメディアにも露出し YMO 以前からの坂本龍一との活動など、ヘンな自己犠牲をするでもなく自分の目指す音楽を追究できたのは、実力以上に運も味方したのでしょう。
私がこのアルバムが好きなのは、もちろん Bill Bruford がお気に入りというのもありますが、曲調に溶け込む3人のインタープレイの見事さが何よりの理由です。もともと緊張感に溢れた演奏が大好きなだけに、ここで繰り広げられる3者のプレイ一つ一つが完成度の高い空間を作り出し、最後まで飽きさせることなく楽しむことができるのです。静岡で行われたツアー公演の映像がビデオ化されているのですが、Bruford の驚くほどリラックスした演奏に感銘を受けました。Simmons などの電子機器も駆使しテンションが高い楽曲にも拘わらず、しゃかりきにならず的確な間で叩く様は、渡辺香津美がいう、『彼はマスタードラマー』という形容詞がピッタリの悟りの境地の世界といえます。また、Berlin のウォームで厚みがありながらも超絶技巧な bass サウンドがこのユニットに必須の土台になっています。
ともあれ、2.のスリル満点の展開や、8.のロック調のリズムに乗った YMO に相通ずるようなメロディー、9.のような Abstruct な楽曲でも3人の個性が見事に表現されているなど、渡辺香津美の最高傑作と呼んで差し支えない作品です。市場には新譜は存在しないでしょうが、是非とも聴いていただきたい名盤です。
さらに、余りにも稀少盤ばかりの紹介ではアレなので、70年代に日立の「Lo-D」というオーディオ機器のCMに使われた『Unicorn』という名曲が収録された「TO CHI KA」のリンクも加えておきます。私も大好きな Mike Mainieri に制作を託した New York 録音の本作は、渡辺香津美を日米双方で一躍スタープレーヤーに押し上げた記念碑的な作品です。こちらは入手可能です。
Kazumi Watanabe (g)
Jeff Berlin (b)
Bill Bruford (ds)
1.Melancho 3:29
2.Hiper K 5:38
3.City 4:29
4.Period 6:38
5.Unt 5:48
6.Na Starovia 4:43
7.Lim-Poo 4:51
8.J. F. K. 4:55
9.Rage In 6:18
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