Helen Merrill Nearness of you

Clifford Brown との共演盤で彼女の代名詞でもある Emarcy のデビュー作から4年後、そのハスキーヴォイスによるレパートリーの広さを見せつけた傑作アルバムです。

特に冒頭の「Bye Bye Blackbird」は個人的に忘れられないナンバーです。大昔に放送されていた FM Tokyo の『音の本棚』という番組がありました。故小池朝雄さん(刑事コロンボでお馴染み)がホストを務めるいわゆるラジオドラマなのですが、現代小説なども果敢にドラマ化して一流の声優さんが登場人物を演じるのが聴きどころでした。

私は、10代の頃に矢作俊彦氏のハードボイルド小説を読みあさっていたので、彼の作品が取り上げられた回は迷わず録音したものです。その中の一つ、『夕焼けのスーパーマン』というタイトルの作品は、音の本棚史上でも最高傑作に数えられるであろう素晴らしい作品になりました。

物語のあらすじはこうです。

“時代は1970年代、横浜の不良少年リョウは拳銃不法所持の容疑で神奈川県警で取り調べを受けていた。モデルガンだったことがわかり、捜査員がいなくなった取調室に捜査一課の刑事である二村エイジがたまたま現れ、リョウと知り合う。
実はリョウは横浜の名士の子息で警察には手に負えるような少年ではなかった。二村に釈放されたリョウは雨の夜に横浜スタジアムで麻薬の取引に関わる。しかし彼は取引相手をモデルガンのはずだった拳銃で殺してしまう。そこに女が車で現れ、リョウを乗せて走り去っていく。女は本当は麻薬シンジケートのボスの連れ合いで、密かにリョウに想いを寄せていた。女の部屋で二人は取引したカネが全部新聞紙だと分かり・・・”

全編に渡って繰り広げられるウィットに富んだジョークや独特の台詞回しが、今では多少古くさく感じられますが、当時の感覚ではとてつもなくカッコよく、田舎の少年にとってはしびれる世界だったのです。

『二村さん、あんたそれでもデカかい?』
『キャデラックに乗ったサルタンにでも見えるかい?』
『オールズモビルに乗ったベガスの芸人には見えるぜ』
『何があったか、咳きこんで聞いてやろうか?』

こんな感じで物語は進んで行きます。
そのドラマの最後、二人が電話で話すシーンなのですが、ラストにかぶるように本作の「Bye Bye Blackbird」が流れてきます。カセットテープからデジタルに落とした音源を、今でも時々聴き直してはノスタルジーに浸っています。

Helen Merrill (vo)
Bobby Jaspar (fl-2,7,9,10,12)
Mile Simpson (fl-1,3,4,5,6,8,11)
Bill Evans (p-2,7,9,10,12)
Disk Marx (p-1,3,4,5,6,8,11)
Fred Rundquist (g-1,3,4,5,6,8,11)
George Russell (g-1,3,4,5,6,8,11)
John Frigo (b-1,3,4,5,6,8,11)
Oscar Pettiford (b-2,7,9,10,12)
Jerry Slosberg (ds-1,3,4,5,6,8,11)
Jo Jones (ds-2,7,9,10,12)

1.Bye Bye Blackbird (2:57)
2.When the sun comes out (4:47)
3.I remember you (2:11)
4.Softly as in a morning sunrise (3:19)
5.Dearly beloved (2:07)
6.Summertime (3:28)
7.All of you (3:33)
8.I see your face before me (2:39)
9.Let me love you (2:48)
10.The nearness of you (4:06)
11.This time the dream’s on me (2:21)
12.Just imagine (3:21)

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