Oscar Peterson The Way I Really Play

以前ご紹介した Monty Alexander は若い頃に “Oscar Peterson もどき” と言われていたことがあります。華麗なテクニックと流暢なフレーズ、目にも止まらぬ早弾きも全然余裕の表情でやってのけるあたりも似ていました。もう取り上げたつもりでしたが、今回初めて Peterson の piano を紹介します。

カナダ生まれの Oscar Peterson は、裕福な家庭に育ち米国のような人種差別を受けずに済んだことで、その人柄も演奏スタイルも極めて明るくリズミカルなことで有名です。同世代(1925年生まれ)のミュージシャンが差別に苦しむ中、Verve、Pablo といったレーベルの創設や Jazz At The Philharmonic(JATP)の立役者でもあった Norman Granz に若くして見出され、その才能を遺憾なく発揮していきました。特に Pablo での録音は名演揃いで Oscar Peterson の piano が何たるかを決定づけたといえるでしょう。

さらに、ドイツの MPS レーベルでは総帥である Hans Georg Brunner-Schwer の庇護の元で数々の代表作を発表し、名声を確実のものにしました。本作は、MPS での Studio ライブという形式ですが、実際はお金持ちのパトロンがお抱えのミュージシャンの演奏を自慢する社交イベントの様子に近いとも言えます。とはいえ、ここでの演奏は1曲目から全開の超絶技巧ナンバーで始まり、2曲目以降もリラックスした雰囲気から次第にテンションが上がっていくようなスリルに満ちた演奏が盛り沢山の内容です。Jazz piano の世界には Chick Corea を始めとして信じられないような技巧や表現力を持ったミュージシャンが多くいますが、1.Waltzing is hip の Peterson の piano は他の誰も到達し得ない圧倒的なダイナミズムと楽器を完全に制覇している凄さを体験することができるナンバーです。piano 好き必聴。

Oscar Peterson (p)
Sam Jones (b)
Bobby Durham (ds)

1. Walzting is hip 5:17
2. Satin doll 5:07
3. Love is here to stay 5:51
4. Sandy’s blues 4:46
5. Alice in wonderland 2:59
6. Noreen’s noctorne 3:13

全品送料無料キャンペーン中

The

Monty Alexander Montreux Alexander Trio Live!

Tales of Another とは別に特にお気に入りな piano trio のアルバムをご紹介します。やはりハイティーンの頃に虜になった演奏ですが、今聴いても色褪せない最高クラスのライブドキュメントがここにあります。

Montreux Jazz Festival には傑作が生まれる確率が高いと言いましたが、これもそのうちの一つです。 Monty Alexander は1944年 ジャマイカ生まれで、pianist のスタイルとしては Oscar Peterson の直系に位置します。首都 Kingston の中でも富裕な層に育ったため、かつての黒人奴隷の悲劇などには無縁でした。
アメリカで頭角を現し始めた頃は、テクニックばかりに頼る英国の植民地出身者のように言われた(Peterson もカナダの富裕層の生まれ)こともあったらしいですが、70年代に欧州への楽旅により広く認められたことが大きかったようです。私も Chicago のクラブで90年代にお会いした経験がある Ed Thigpen(drummer で Peterson Trio にも参加。 当時アメリカのミュージシャンを積極的に受け入れていた Copenhagen へ移住 )らに歓迎され、現地で様々なセッションに参加しレコーディングも行いました。その中の一つが Count Basie 楽団の bassist だった John Clayton と、Woody Herman 楽団の drummer だった Jeff Hamilton との trio での Montreux 出演につながります。

私が心酔するのは、4.Work Song のインスピレーション溢れる凄まじい、まるでジェットコースターに乗っているかのようなドラマティックな後半です。piano trio の演奏としては出色のもので、piano の弦を掻き鳴らすなどの特異な場面さえ実に必然的に思える劇的な構成となっており、さらに驚くのがこれだけの熱演の後にも拘わらず、拍手の間も与えずに次のナンバーへと展開していく巧妙な演出が、何とも大御所の晴れ舞台のようなすこぶる付きの名演奏となっているのです。
昔、wowowでこの時の演奏が放送されたんですが、残念ながら Work Song は入っておらず、ガッカリした覚えがあります。しかし、前半の Armad Jamal 作の Nite Mist Blues のゴキゲンな映像が視聴可能なので、この trio に興味を持っていただけるかどうか是非試してみてください。

Monty Alexander – piano
John Clayton – bass
Jeff Hamilton – drums

1.Nite Mist Blues 10:12
2.Feelings 5:36
3.Satin Doll 8:21
4.Work Song 13:38
5.Drown In My Tears 3:59
6.Battle Hymn Of The Republic 5:00


Recorded live at the Montreux Festival, June 10, 1976

Monty Alexander Trio - Montreux Alexander Live! at the Montreux Festival

Junior Mance JUNIOR

piano trio の魅力というのは、結局3人の息がいかに合っているかということになるかと思います。ピッタリ合った演奏に出会った時に感じる官能的とも言える感覚を感じられるかどうか。

私が最初に 3.Whisper Not を聴いた時に感動したのは、その息の合い方に極まった感があることでした。サイドメンも申し分なし、Blues フィーリングに至っては 9. のように他の追従を許さないコロガシもあり、4. Love For Sale のように速い曲でも幸せな気持ちでノれるのは誰よりもこの3人が息が合っている証拠でしょう。これらは、Ray Brown の bass がなかったら決して為し得なかったはずです。

Jazz Bass の3大巨人と称されるのは、Oscar Pettiford・Charles Mingus・Ray Brown と言われています。なかでも Ray Brown は最もキャリアの長い一流ミュージシャンとして輝かしい経歴を持っていますが、それだけにこんな逸話があります。
大ホールでのコンボの演奏の際、Pickup マイクを付けずにプレイし、2階席でさえもしっかり bass 音どころかスウィング感さえ迫ってきたというのです。Contrabass で生音を響かせることが簡単でないことは当然ですが、ただ単にデカい音を出せば良いわけではないし、ましてや2階席までスウィングさせるなんてこの人以外にできる芸当ではないんですよね。こういう人は世界人間国宝に認定すべきです。本当に。

Junior Mance (p)
Ray Brown (b)
Lex Humphries (ds)

1.Smooth One (Goodman, Royal) 3:29
2.Miss Jackie’s Delight (Wright) 3:54
3.Whisper Not (Golson) 4:22
4.Love for Sale (Porter) 4:26
5.Lilacs in the Rain (DeRose, Palish) 3:42
6.Small Fry (Carmichael, Loesser) 4:08
7.Jubilation (Mance) 3:31
8.Birk’s Works (Gillespie) 5:45
9.Blues for Beverlee (Mance) 7:54
10.Junior’s Tune (Mance) 3:33

Junior Mance - ジュニア

Red Garland The P.C. Blues

Red Garland といえば、Groovyが真っ先に頭に浮かぶと思います。本作は、どちらかというと企画盤に近いのでご存じの方は少ないかもしれません。

表題の「P.C.」は、もちろん Paul Chambers のこと。30代半ばで急逝した Bass の名手への追悼盤となっており、録音時はリリースされる12年前となります。1.のみ Philly Joe Jones の drums で曲自体も Miles Davis の Prestige マラソンセッションの一つ「Workin’」のものと全く同じものです。他の曲はすべて Arther Taylor との録音ですが、これが「Groovy」よりグルーヴィな名演揃いなのです。

後に Philly Joe Jones との Trio が "The Rhythm Section" と呼ばれ西海岸で Art Pepper (as) と共演するなど有名になりましたが、どちらかというと Taylor とのコンビネーションのほうが完成度は高いと思います。それは 4.Tweedle Dee Dee や 5.の表題曲を聴けばわかるでしょう。決して Jazz史に残るようなアルバムではありません。リラックスしたい時、気持ちの良いスゥイング感を味わいたい時に最適な一枚としておすすめします。

Red Garland (piano)
Paul Chambers (bass)
Art Taylor (drums)
Philly Joe Jones (drums,only-1)

1.Ahmad’s Blues 7:29
2.Lost April 6:26
3.Why Was I Born? 5:49
4.Tweedle Dee Dee 13:18
5.The P.C. Blues 9:53

The Three

レコードで手に入ったのが、80年代初めまで。CDに至ってはリリースされていたことも気づかなかったほどです。とにかく、Satin Dollが絶品です。私のこの曲の絶対的な基準はこのアルバムなので、これと同等か、これより劣るかしか他にありません。

なぜ、これほどまでに優れた演奏が評価されないのかが不思議でなりません。世のジャズ通と自称する方にハッキリと進言します。これ聴いてください。

とはいうものの、現在はおそらく入手できません。CDリリースも僅かな期間で今でも in store なところはないでしょう。

私は、LPは持っていましたが遙か昔に人手に渡り、たぶん20年くらいは寂しい思いをしていましたが、幸いなことに最近になって中古盤CDをマーケットプレイス経由で手に入れることができました(送料込みで2,840円)。

セカンドカットのようで、各曲の頭に少しノイズが乗るんですが、それでもあの素晴らしい演奏が聴けるだけで何も言うことはありませんでした。もし、どんな形でも手に入る可能性があったら、必聴です。これもEast Windの作品です。

Joe Sample (Piano)
Ray Brown (Bass)
Shelly Manne (Drums)

Recorded Nov. 28, 1975

Side A
1 Yearnin’  (Nelson)  5:08
2 On Green Dolphin Street  (Kaper, Washington)  5:19
3 Satin Doll  (Ellington, Strayhorn, Mercer)  5:43

Side B
1 Manha Do Carnaval  (Bonfa,Maria, Llenas)  6:02
2 ‘Round About Midnight  (Monk, Williams, Hanighen)  4:37
3 Funky Blues  (Sample, Brown, Manne)  5:13

Great Jazz Trio At The Village Vanguard Vol.1

高校時代、それまで名盤を聞き込むことに時間を費やしてきた中で、臨場感というものを味わうような音に巡り会わなかったわけではありませんでしたが、Rudy Van Gelder による Englewood Cliffs でのリバーヴの効いた Blue Note レーベルのサウンドこそがジャズや! ファンキーや! ハードバップや! と思い込んでた耳に、ライブ録音の新鮮な躍動感がいかに爽快な青春のカタルシスをもたらすか、を実感したアルバムがこれです。

GJTの誕生は、鯉沼さんを始めとした EAST WIND レーベルの吟味の結晶であり、日本発の日本人が愛してやまないジャズ製作の形として日米の一流ミュージシャンを起用した極めて完成度の高い演奏を提供する金字塔となった企画でした。

後年、私が運営に携わったジャズクラブに Hank Jones が出演してくれた際に言っていた、
「70歳を過ぎた今も、1日練習をサボると自分で分かるし、3日やらないと妻が気づく。1週間だとお客さんに分かってしまう」
という言葉。そんな信念をもって音楽と向き合っているんですね。

Parkerの1. のっけから『ピアノトリオ斯くあるべし』といえる好演となっています。

Hank Jones  (Piano)
Ron Carter  (Bass)
Tony Williams  (Drums)

Recorded Feb. 19-20, 1977

1 Moose the Mooche  (C.Parker)
2 Naima  (J.Coltrane)
3 Favors  (C.Ogerman)
4 12+12  (R.Carter)

ザ・グレイト・ジャズ・トリオ - アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード