Scott Hamilton Scott Hamilton,2

久々の更新になってしまいました。理由はネタ切れではなく、単に面倒くさかっただけです。すみません。
今日のアルバムは、今から30年ほど前によく聴いていたもので、この季節のちょっと涼しい時間帯に流すとピッタリなスウィングナンバー集です。

1950年以降に生まれた Saxophone 奏者は、普通 John Coltrane を始めとするいわゆるハードバップ以降の即興(インプロヴィゼーション)に重きを置いたモダンなスタイルを指向するものなのですが、Scott Hamilton という人は若くして、Coleman Hawkins や Ben Webster といったスウィング時代の名手を徹底的に研究し、メロウで切ないメロディばかりを奏でる当時でも大変珍しいミュージシャンでした。
東海岸のメジャーレーベルではこうしたミュージシャンの出番はなく、New York などで勝負することは不可能なわけで、こうした奏者は芽の出ない地方都市のホテルでラウンジ演奏するくらいが関の山だったに違いありません。

しかし、こうした豊かな才能を拾い上げるのもアメリカの得意技の一つで、西海岸で行われていた Concord Jazz Festival を主催する Carl Jefferson というお金持ちに見出されてデビューします。Jefferson が設立した Concord Jazz レーベルに録音したデビュー盤が評判となり、以後このレーベルの看板スターとして今でも活躍しています。Concord レーベルは比較的軽快で明るい演奏が中心の録音が多く、こうした音楽を元々好むお国柄ゆえ、2000年以降はオンラインの影響による業界の衰退も手伝って様々なレコードレーベルを吸収するに至ります。

Swing Jazz は何だかんだ言っても1930年〜40年あたりが全盛だったこともあり、多くの名演は録音が古く、その味を楽しむのにはいいのですが、いかんせん故人になってしまった名手の演奏は生では聴くわけにいきません。ところが、そうした Old Jazz ファンを満足させうる演奏を当時20代の若者が渋くて粋な風貌で演るというのはたまらなかったのでしょう。私が1990年前後にアメリカの田舎に行っていた時も、年配の人たちはその頃 Frank Sinatra の再来と騒がれた Harry Connick Jr.に夢中だったのを思い出します。
もう一つは、音質の問題です。1970年以降はレコードを再生するためのオーディオ機器などの環境が急速に整ったこともあり、一般家庭でも臨場感のある音響を聴くことが可能になりました。こうしたことも彼らのような音楽を後押ししたかもしれません。

さて、1978年録音のこのアルバム自体はもう廃盤になっており、逆に本作を含むデビュー当時の2枚分が1枚で聴けるお得なコンピレーション盤(下記)が出されています。個人的には、彼の十八番である East of the Sun にしびれて買った記憶があり、全体的にリラックスした中にも熱い演奏の詰まった大好きなアルバムです。

Scott Hamilton (ts)
Cal Collins (g)
Monty Budwig (b)
Nat Pierce (p)
Jake Hanna (ds)

1.East of the sun 3:37
2.There is no greater Love 4:05
3.Rough ridin’ 4:16
4.These foolish things 6:21
5.I want to be happy 4:45
6.Everything happens to me 5:40
7.Love me or leave me 4:12
8.Blues for the players 4:23
5.The very thought of you 3:42
6.It could happen to you 5:40

iTunes Storeでは試し聴きができます。是非「East of the Sun」を聴いてみてください

From the Beginning - Scott Hamilton

John Coltrane and Johnny Hartman

これから不定期な雪や雨の日が到来し、「一雨毎(ひとあめごと)に春になり」という季節になってまいりました。仕事で忙しいのは変わらずとも、夜は暖かい家の中でリラックスしたいものです。

そんな夜のひとときにこれ以上無いと思う音楽が今日ご紹介するアルバムです。名盤なのでご存知の方も多いでしょう。John Coltrane 黄金期の Quartet としては、傑作の誉れ高い『A Love Supreme』の前年の録音(1963年)ですが、何とも穏やかなサウンドが聴く者の心を捉え、Hartman の珠玉の歌声に酔いしれることができる屈指の vocal アルバムでもあります。この頃の Coltrane 自体は、いわゆる「Sheets of sound」を体得せんと蕩々と続くインプヴィゼーション(即興)の世界を探求する表現者として、演奏の出来不出来の波に苦しむ時代でした。そんな姿を見ての判断なのか、あるいは単にコマーシャルな思惑なのかわかりませんが、producer の Bob Thiele が期待した通りの素晴らしい作品になったのでした。

Hartman の vocal には男女を問わず感銘を受けるでしょう。当時彼の公演の際は女性客がメロメロになったそうですが、男であってもぐっと来るセクシーな歌いっぷりは、後にも先にも全盛期の Frank Sinatra くらいしか対抗馬を思いつきません(今度ピックアップします)。本当のオトナのための楽曲として、個人的にはオトナの女性に是非聴いてもらいたい作品の一つです。ゆったりと食後酒でも飲みながら楽しんでいただけると良いかと・・・

John Coltrane (ts)
Johnny Hartman (vo)
Jimmy Garrison (b)
McCoy Tyner (p)
Elvin Jones (ds)

1.They Say It’s Wonderful 5:22
2.Dedicated To You 5:34
3.My One And Only Love 4:58
4.Lush Life 5:30
5.You are too beautiful 5:36
6.Autumn Serenade 4:22
7.Vilia 4:39(CD only)

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John Coltrane and Johnny Hartman - EP - ジョン・コルトレーン & Johnny Hartman

Bill Evans The Gambler – Bill Evans Group Live At Blue Note Tokyo 2

1990年9月 Blue Note Tokyo でのライブ録音である本作は、前年に録音されたLet The Juice Looseとある意味対照的であり、サイドメンの構成によって曲調がかなり変わるところが Bill Evans という人の守備範囲の広さを表しているとも言えます。

前作では、Dennis Chambers、Darryl Jones の爆弾コンビだったリズム隊が、本作では Victor Bailey と Richie Morales という少し意外な組み合わせに替わっており、Weather Report 好きな私にとっては興味をそそられました。前作もリリースと同時に購入しましたが、初盤の音質が今ひとつで、本作の購入時にちょっと不安もありました。しかし、空気感がまるで違う素晴らしい録音状態にほっとすると同時に、その音質も理由になってこちらを聴く機会が増えたのでした。両作品とも producer は増尾好秋です(あの「Sailing Wonder」のguitarist)。

私の愛聴曲は、5.の Bailey のオリジナルで彼独特の bass ソロを堪能することができます。自身のリーダー作ではタイトル曲になっているものですが、本作の演奏の方が断然いいです。ソロ部分の掛け合いが絶妙で、私的にはこのアルバムのハイライトはこのナンバーです。表題曲を始め他のナンバーも後半に盛り上がるものが多く、聴き応えは前作よりもあると言えます。唯一、ラストの7.のみオープニングから全開のファンクサウンドを全員が心から楽しんで演奏している様子が分かります。

1981年の10月に新宿西口での Miles Davis の復活来日公演でもの凄いプレッシャーを受けながら演奏していた Evans を思い出します。その後数十年にわたって現在でも確固たる地位を築けたのは、様々なミュージシャンから慕われる彼の才能と人間性によるものでしょう。本作もCDの入手自体は困難ですが、iTunes等の配信では手に入れることが可能です。

Bill Evans (ss, ts)
Victor Bailey (b)
Michel Forman (key)
Richie Morales (ds)

1.The Gambler 12:07
2.Sun Dried 11:55
3.Sea Of Fertility 9:01
4.Justa Hunch 8:30
5.Kid Logic 8:43
6.Gorgeous 8:18
7.Crest Annex 5:54

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ザ・ギャンブラー ~ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルーノート東京 II - Bill Evans Group

Michael Brecker Don’t Try This at Home

いわずと知れた Michael Brecker。誰それのあのアルバムのソロはすごいよね、とか、あのグループのライブの時の Brecker のフレーズが最高だ、とか基本的にサイドメンの仕事がこの人の音楽人生の大半を占めていたので、リーダー作(”Brothers” は例外として)が話題に上がりにくいミュージシャンの一人でした。
この人は間違いなく天才です。考えた通りの音を寸分違わず表現できるだけでなく、その膨大な経験からどんなジャンルのサウンドにも彼の音として存在感を示すことができた、歴史上でもほんの一握りしか認められない音楽家だったと思います。

本作は、実質2作目のリーダー作となる1988年の Impulse 盤で、オールスター録音だった1作目と比べるとキチンと自己バンド中心の演奏をメインに、ゲスト参加ナンバーも程よく配していて作品としての完成度は高く、後年リリースされた(1997年発表の5作目)<a href="Two Blocks From the Edgeと並んで自身名義の最高傑作と言える出来になっています。開発に協力した AKAI の EWI(Electric Wind Instrument)も使い、無国籍風のテイストを盛り込んだ1.や激しいインタープレイの5.など、通常のライブでは味わえない演奏が収録されています。個人的には、レギュラーに近い構成+ Peter Erskine 参加の7.が大好きです。sax と guitar によるユニゾンのテーマに Erskine でなければ表現できないであろう独特のレガートが得も言われぬ絶妙なコンビネーションを生んでいて比較的リラックスした小品ながら、テンションを高く維持した空気感に引き込まれます。
この時点レギュラーで当時は新人だった Joey Calderazzo がいい仕事をしており、硬軟併せ持ったプレイスタイルが他の大物からも引き合いがあったことに合点がいきます。Producer は Don Grolnick。全体的にまとまりという面では、ゲスト各々の個性も反映させているため多少の凸凹感が残るものの、私はこのアルバムへ注がれた情熱のようなものを感じることができて好きです。彼が白血病で他界してからもう4年近くなってしまいました。沢山の名演によって幾多の楽しみを与えてくれた恩人のような Michael Brecker。ご冥福をお祈ります。

Michael Brecker (ts, key, EWI)
Mike Stern (g)
Mark O’Connor (vln)
Jim Beard (p, syn)
Don Grolnick (p)
Herbie Hancock (p)
Joey Calderazzo (p)
Judd Miller (syn)
Charlie Haden (b)
Jeff Andrews (el-b)
Jack DeJohnette (ds)
Adam Nussbaum (ds)
Peter Erskine (ds)

1.Itsbynne Reel 7:43
2.Chime This 7:51
3.Scriabin 7:47
4.Suspone 4:59
5.Don’t Try This at Home 9:30
6.Everything Happens When You’re Gone 7:13
7.Talking to Myself 5:10
8.Gentleman & Hizcaine 5:20

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iTunes Store でも購入できます

Gary Thomas While the gate is open

かつて Maryland州 Baltimore を中心にした Jazz unit がいくつか注目を集めた時期がありました。『Baltimore Syndicate』、『Seventh Quadrant』などですが、独特のインテリジェンスと割と激しい曲調のギャップが特徴で、NY のサウンドとは一線を画した個性的な音とミュージシャンが存在しました。

筋肉ムキムキで重量級の tenor sax 奏者である Gary Thomas もその一人。第一作の『Seventh Quadrant』からしてまさに重量級のサウンドで、以降の各リーダー作はもちろん、サイドでのプレイも一貫して戦車みたいなサウンドを信条として活躍してきた人です。

本作は1990年録音のリーダーとしては4作目にあたるものですが、コンセプト的には初のスタンダード曲中心のアルバムとなっており、お馴染みの名曲たちを Thomas 独自の切り口で表現しています。しかし、一発目からガンガン殴られるような重量級のサウンドをカマしてくれており、Ballad 演奏であってもメンツを見てお分かりのようにリズム隊が野放し一歩手前で何とか理性を働かせました的なナンバーも見受けられます。私にとって印象深いのは、この前作に当たる『By Any Means Necessary』に参加していた John Scofield に代わって guitar を弾いている Kevin Eubanks が、それまでの Earl Klugh ライクなイメージから一転してヘヴィーな姿を披露していることです。リラックスとはほど遠いガリガリのセミアコサウンドにしびれること請け合いです。
現在、Thomas は世界的にも最難関といわれる名門 Johns Hopkins大学の Peabody Institute で Jazz 理論の主任教授を務めています。う〜ん、スゴイ人なのでした。

Gary Thomas (ts, fl)
Kevin Eubanks (g)
Renee Rosnes (p, synth)
Dave Holland (b)
Anthony Cox (b)
Dennis Chambers (ds)

1. Strode Rode 8:06
2. Star Eyes 7:27
3. You Stepped Out Of A Dream 7:58
4. The Song Is You 7:32
5. Invitation 10:00
6. Chelsea Bridge 5:38
7. On The Trail 6:47
8. Epistrophy 5:39

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Wayne Shorter Native Dancer

Wayne Shorter の最高傑作といえばこの作品です。おそらく本作を超えるものを発表することは今後ないと思います。

実は、Shorter も Hancock も Milton Nascimento の『追っかけ』に近い存在だったそうで、この共演はある意味で夢が実現した作品らしいです。各楽曲ともメインストリームのサウンドとはほど遠い、Brazilian Fusion ともいうべき性格のもので、 Nascimento のナチュラルな歌声と Shorter らの演奏がものの見事に融合した理想的な音楽領域を創り出しています。

ゴリゴリの Jazz を求めて日夜耳を肥やしていた少年時代に、この作品と出会いました。最初は「なんて軟弱でフヤけた音楽だろう」と思い、聴き直すまではかなり時間を置いた記憶があります。当時の私にはどう考えても洒落た高級リゾートのBGMくらいにしか捉えられず、実際二十歳を超えるまではブラジル音楽の良ささえ分かりませんでした。しかし、やがて極度な偏見から脱して幅広く音楽を受け止められるようになったきっかけを与えてくれたもこの作品でした。よく聴いてみると Shorter と Hancock がそこはかとなくブラジルの音楽を慕い、自分たちが持ち合わせようがないフィーリングを求めて彼らと共に探り出す旅を綴った行程のドキュメンタリーと捉えることもできるなと思ったのです。物見遊山的な、あるいは趣味の一環で録音したとばかり思っていたのが、ある日突然例えようもなく味わい深い作品に変わった典型的な一枚です。

Wayne Shorter (ss)
Herbie Hancock (p)
Wagner Tiso (el-p, org)
Jay Graydon (g)
Dave McDaniel (b)
Roberto Silva (ds)
Milton Nascimento (vo)

1. Ponta de Areira 5:18
2. Beauty and the Beast 5:05
3. Tarde 5:49
4. Miracle of the Fishes 4:49
5. Diana 3:04
6. From the Lonely Afternoon 3:16
7. Ana Maria 5:11
8. Lilia 7:03
9. Joanna’s Theme 4:18

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Gerry Mulligan Night Lights

Weather Report 特集は前回でひとまず第一回を終えまして、またその気になった時に再開いたします。今回は… これは名盤ですね。文句ありません。

何と言っても、Shopin をアレンジした「Prelude in E minor」。これを聴くとかつての FM東京の深夜番組「Aspect in Jazz」のテーマ曲として当時の想い出がよみがえってきます。油井正一さんの『こんばんは。ゆいしょういちです。てぃーでぃーけーがおおくりする〜』というちょっとダミ声の名調子がすっと浮かんできます。「Mr. Lonely」を聴くと「Jet Stream」の城 達也さんの声を思い出すのと一緒なんですが、私としてはあの情報の少ない時代にこの番組に本当に助けていただいてましたので感傷的にさえなってしまいます。

さて、Gerry Mulligan という人ですが baritone sax の第一人者であり、西海岸を代表する作編曲の大御所でもあります。次回ご紹介する予定の Gil Evans とは180度反対側にいた(音楽的にではなく)境遇と幸運に恵まれた才人として Jazz 界の金字塔の一人と言えるでしょう。Mulligan は演奏なんかしなくてもアレンジャーとして充分にメシを喰っていけてた人でした。1940年代には Claude Thornhill や Stan Kenton の楽団に提供したアレンジがとても斬新で作編曲家としての地位を充分確立していました。
その後、50年代に California へ移りこの人の専売特許とも言える pianoless quartet での活動を始め、いわゆる West Coast Jazz を誕生させることになります。この成果は歴史に残る偉業といっても良いくらいで、今日の西海岸の Jazz・Fusion シーンを生み出した功労者は Mulligan だといって差し支えないと思います。モダンな時代の Jazz に piano がいない集団演奏が成り立たないわけではないですが、当時の感覚では管を加えた combo 演奏にとってはあり得ないほど斬新だったようです。

本作は Mulligan の代表作の一つであり、脇を固める Jim Hall や Art Farmer も寸分の狂いなく完璧な演奏を繰り広げています。前述の曲の他、一曲一曲が珠玉の名演となっており、静かな中にもピンと張り詰めた心地よい緊張感と絶妙なアレンジによる Festive Minor のような佳曲によって baritone sax という脇役楽器の真の魅力を存分に味わえるアルバムとなっています。

Art Farmer (tp, flh)
Bob Brookmeyer (v-tb)
Gerry Mulligan (p on A-1, bs)
Jim Hall (g)
Bill Crow (b)
Dave Bailey (ds)

1. Night Lights [1963 Version] 4:58
2. Morning of the Carnival (Manha de Carnaval) 5:31
3. In the Wee Small Hours of the Morning 5:40
4. Prelude in E minor 4:17
5. Festival Minor 6:51
6. Tell Me When 4:09
7. Night Lights [1965 Version] 2:56

Gerry Mulligan Sextet - Night Lights

Zoot Sims If I’m Lucky

自分の感覚だけで選んでいくと、当然一般的な評価とは全然違う観点で好きな音楽の世界が出来上がっていきます。つくづく、この食堂は偏ったメニューだなと思う次第で。

Jazz を聴き始めてしばらくすると、歴史を遡って古い時代の巨人といわれる人たちによる演奏にも関心が広がっていきました。Swing 時代の巨人、例えば Lester Young であるとか Ben Webster、Coleman Hawkins らのような花形 sax プレーヤーもそうです。
その Lester Young の系統に位置する Zoot Sims は、彼らのような華々しいスポットライトを浴びていたというわけではありませんが、個人的に大好きな sax プレーヤーです。本作は、70年代に沢山のリリース作品を持つ Pablo レーベルでの一枚です。実はこれも1曲買いに近いもので、5.You’re My Everyting が私的には最高の1曲となっています。

この人の中高音域のシルキーな音色は、ノスタルジックでありながら実に心に染み入るような気持ちよさを感じさせてくれる本当の意味での『名手』の音色だと言えます。冒頭で言いました一般論では、1.、3.、4.、7.あたりが本作の評価対象になるのですが、私は逆らって 5.を押します。とろけるような気持ちよさを味わえます。

Zoot Sims (tenor saxophone)
Jimmy Rowles (piano)
George Mraz (bass)
Mousey Alexander (drums)

1.(I Wonder) Where Our Love Has Gone 4:55
2.Legs 6:32
3.If I’m Lucky 5:30
4.Shadow Waltz 5:35
5.You’re My Everything 5:27
6.It’s Alright With Me 6:55
7.Gypsy Sweetheart 4:18
8.I Hear a Rhapsody 6:29

John Coltrane The Other Village Vanguard Tapes

10代中頃になると小遣いを貯めては上京し、ジャズ喫茶で4〜5時間ジャズのお勉強に勤しんだ後にレコード店回りをしました。
当時は、新宿の「オザワ」や「Disc Union」、電脳街になるずっと前の秋葉原では「石丸電気レコードフロア」などが中心でした。掘り出し物は「オザワ」で、品数で勝負は「石丸」でという感じ。「石丸」は、大きなフロア毎に各ジャンルで分かれていたので、〜階は全部ジャズというふうにおびただしい数のレコードで埋め尽くされ、ヨダレを拭いながら血眼になって1枚1枚抜き出しては内容をチェックしたものです。

ある時、駅前のラジオ会館の一室でジャズレコードの輸入盤市が催されるのを聞きつけ、覗いた際に見つけたのが今回取り上げる作品です。
2枚組のくせに上からプレス機にかけたようにシュリンクラップされペッタンコになり、輸入盤独特の糊のニオイを放っていました。沸き立つ思いを抑えつつ、鈍行電車に2時間余り揺られて帰宅するや固唾を呑んで針を落とした次の瞬間に全身が逆毛だったことを記憶しています。
Chasin’ The Traneの凄まじい迫力、Coltrane、Dolphyの狂気にも似たインプロヴィゼーション、怒濤のリズム隊が渾然一体となって襲いかかってきます。聞き終わった後は放心し、ふぬけのようになっていたと思いますよ、たぶん。Coltraneもくったくたになっていて目が泳いでいたかもしれません。
ライブ録音自体は既にリリースされていたものですが、タイトル通り別テイクが存在していてそれをまとめたのが本作です。興味のない人にとっては騒音でしょうね、きっと。Village Vanguardってどんなスゲェとこなんだろう? と少年は全く手がかりがないまま想像を膨らませていた頃でしたが、のちに何度も足を運ぶとは夢にも思いませんでした。

残念ながら、本作も手に入ることはないでしょう。1961年のこのライブ自体は数枚に分かれて現在でも入手可能ですが、この構成が私はベストだと思うので。

1.Chasin’ The Trane (9:51)
2.Spiritual (12:40)
3.Untitled original (18:40)
4.India (15:25)
5.Greensleeves (6:18)
6.Spiritual (20:32)

John Coltrane tenor and soprano sax
Eric Dolphy bass clarinet ( On Track 2 Only )
Jimmy Garrison bass
McCoy Tyner piano
Reggie Workman bass
Elvin Jones drums

Recorded Nov 2,3,4,5, 1961 at New York City