John Scofield Pick Hits Live

どんどん行きますよ。次はジョンスコです。
まんま Funk Band の演奏ですが、歴史に残るライブ演奏となっています。

Scofield は、(そらみみさんには馴染み深いと思いますが)Gary Burton のグループに Pat Metheny の後任として加わったあたりから頭角を現し、Miles Davis Band への参加を経て Gramavisionレーベル時代の一連の Funk 路線で世のギター小僧の憧れとなりました。商業的には Metheny には及びませんが、結構好きなことをやって人気があった少数派の一人です。

独特のウニウニ音はこの人の専売特許といえますが、P-Funk(Parliament/Funkadelic)のリズム隊であるデニチェンこと Dennis Chambers(ds) と Gary Grainger(b) が凄すぎて、このライブ盤全部を一気に聴くとクタクタになるほどです。音に対峙というより戦闘ですね。とはいえ、かしましいだけの音楽とは一線を画したド迫力の秘密は、音響の良さで名高い昭和女子大学人見記念講堂での収録というのも関係あるかも。

全体を通じて、スタジオ盤の原曲がこのメンツのライブ演奏になると全く別モノに生まれ変わるということが分かります。Bandが生き生きとしていて、メンバーそれぞれが充実していないとこんな演奏はできないでしょう。7.Trim の16分に及ぶ徹底的な過激さに圧倒されてください。ホント、生で観たかったです、このライブ。
Gramavision時代のエピソードもいっぱいありますが、その後のBlue Noteへの移籍や Metheny との共演、New Orleans音楽への傾注と見事にやりたい音楽をやってメシを喰っている羨ましいミュージシャンがジョンスコです。

John Scofield – guitar
Robert Aries – keyboards
Gary Grainger – bass guitar
Dennis Chambers – drums

1.Picks and Pans	7:00
2.Pick Hits 6:52
3.Heaven Hill 8:21
4.Protocol 9:23
5.Blue Matter 7:34
6.Thanks Again 6:40
7.Trim        16:29
8.Georgia On My Mind 7:02
9.Make Me 4:11

John Scofield - Pick Hits Live

Jimmy Smith Midnight Special

オルガンはこれですね。Verve 時代のワイルドな迫力も当然大好きですが、どうせ Blues ばっかしだし音色がキレイな録音のほうが聴いてて気持ちいいですから。

1990年頃の移転前の青山 Blue Note。Trioで出演していた際に、当時の役得で最初のセット後の休憩中に楽屋を訪れることができました。guitarの Kenny Burrell はすごく気さくな人で、入り口で挨拶しながら少し話せたのですが、Smith だけは奥のテーブルから迷惑そうに「メシ喰ってンのになんの用だ」と言わんばかりの視線を投げかけていただいたのを覚えています(笑)。Burrell の肌がすごく白かったが印象的でした。

さて、Organ の第一人者であり 、Bass Pedal を操る左足は Miles Davis をして『世界で8番目の不思議』と言わしめた Jimmy Smith には数々の代表的な名盤がありますが、私は本作をおすすめとして選びます。
気心の知れた仲間で、ややリラックスムードでのセッションという趣きなんですが、どうしてどうしてグルーヴィなサウンドをたっぷり楽しめるところが他のアルバムとはひと味違います。1.の表題曲のように、ストイックな展開から徐々に盛り上がり、でも決してハジけない曲調とか、Burrell の guitar が絶妙なソロを聴かせる 3.、Count Basie でお馴染みの 5. の Smith らしいアレンジなど、どの楽曲も充分に Organ Jazz の魅力を楽しめる快作です。
Stanley Turrentine の Tenor Sax も出過ぎず、しっとりとだが切れよくドライブしてホントに気持ちよく聴くことができると思います。名作です。

Jimmy Smith(org)
Donald Bailey(ds)
Kenny Burrell(g)
Stanley Turrentine(ts)

1. Midnight Special 9:58
2. A Subtle One 7:45
3. Jumpin' The Blues 5:28
4. Why Was I Born? 6:36
5. One O'Clock Jump 6:59


Digital Remaster盤(Import)

Jimmy Smith - Midnight Special (Rudy Van Gelder Edition) [Remastered] - EP

Herbie Hancock V.S.O.P.

この人の場合、何から取り上げていっていいのか苦労します。今回は悩んだ結果、こうなりました。

このアルバムも、ず〜〜と絶版になってました。売れる売れないとかでなく、版権などの大人の事情なんかもあるんでしょう、きっと。でもですよ、Rockで例えれば Allman Brothers Band At Fillmore East や Deep Purple Live in Japan のような(ちょっと違うか)ものなのに、Jazzの世界ではすぐ廃盤になっちゃうんですよね。納得いかない。(?ONY系のレーベルに多いぞ!)

言いたいことは山ほどありますが、ご紹介を。本作は、あの映画『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer’s  Day)』の舞台にもなった、Newport Jazz Festival の1976年のプログラムの1つとして録音された作品です。ちなみにご存じでない方のためにこのジャズフェスのことを少し。

Newport Jazz Festival は、米国ロードアイランド州の避暑地で行われていた世界最古の Jazz の野外イベントで、pianistだった George Wein という人が社交界のお金持ちの援助を受けて1954年に始めたものです。数々の名演の舞台になりましたが、個人的には野外のジャズフェスというのは所詮「お祭り」的で、あまり心に響くような演奏は期待しにくいものという思い込みがあります(例外あり)。そしてその後、フォーマットの拡張という名目で集客やスポンサーの意向もあって1972年に一度 New York City へ開催場所を移します。本作もこのタームに行われたもので、New York City Centerでのライブとなっています。
模倣した野外フェスが増えていき、先見の手腕を評価された Wein は調子に乗って「リゾートでやるのが一番」と今度は同じNYの Saratoga に場所を移し、さらに日本の斑尾でも興行を行うという大活躍。この時期が野外のジャズフェスの全盛期と言えます。
目玉を失った本家 Newport は、もう一度夢を見たいがため 1981年にイベントの場所を元へ戻します。その後は Wein もメディア会社へイベント自体の興行権を譲渡し、すっかり目立たない存在に落ちぶれました(その後JVC Jazz Festival という名称でNYCにて開催)。

さて、本作は1976年開催のプログラムとして、Hancockの音楽的軌跡をサマライズする目的で組まれたのですが、Miles Davis 時代は外せないため Davis を招聘したかったがもちろん叶わず、そんぢゃ Freddie Hubbard でということで決まった前半と、Julian Priesterらとの Sextant時代の中盤、さらに Wah Wah Watson や Ray Parker Jr. らとのユニットでFunk全開な後半の3つから構成されています。なんといっても圧巻は前半最後の「Introduction of Players」から「Eye of The Hurricane」へのくだりです。Hancock によるスリリングなメンバー紹介は、これだけでひとつのエンターテインメントといえるほどの興奮をもたらす最高のスパイスとなっています。そして元祖神童 Tony Williams による信じられない圧倒的な Drumming! それまで、「Fore and More」あたりでスゲェ〜と思っていた印象を一気に吹っ飛ばす最強の演奏に思わず息を呑みます。そして、同じくメンバー紹介からカッコいい後半の「Hang Up Your Hang Ups」へとなだれ込みます。今の若い方々はこの曲を聴いてどう思うんですかね? 私なんか今でも悶絶しそうになるくらい「カッコいい〜」となりますけど。なんか、書いてたら聴きたくなったので聴きながら書きますね。
とにかく、内容的も盛り沢山ですが演奏が素晴らしいので Hancock のおすすめ作品ではこれを外すわけにはいきません。この頃、折からのCrossoverというか後のFusionブームが到来して電子楽器が主流に躍り出ようとしている時期でしたが、ここでの Miles Davis Quintet のトリビュートがきっかけで、それまでElectricへ傾斜を深めていた Hancock がAcousticなサウンドに回帰したこともその後のJazz界にとっては良かったのかもしれません。

Bass – Ron Carter (1-4) , Mchezaji Buster Williams (5-7)
Drums – Tony Williams (1-4) , Jabali Billy Hart (5-7) , James Levi (8-9)
Electric Bass – Paul Jackson (8-9)
Electric Piano [Rhodes, Yamaha Electric Grand Piano], Clavinet [Hohner D6] – Mwandishi Herbie Hancock (1-3)
Electric Piano [Rhodes, Yamaha Electric Grand Piano], Synthesizer [Arp Odyssey, Arp String Ensemble], Clavinet [Hohner D6], Synthesizer [Micro-moog, Oberheim Polyphonic Synthesizer, Echoplex, Countryman Phase Shifter, Cry Baby Wah Wah] – Herbie Hancock (8-9)
Electric Piano [Yamaha Electric Grand Piano] – Herbie Hancock (1-4)
Flute [Alto] – Mwile Bennie Maupin (5-7)
Guitar – Ray Parker Jr. (8-9)
Guitar, Synthesizer [Maestro Universal Synthesizer System, Maestro Sample & Hold], Talkbox [Voice Bag] – Wah Wah Watson (8-9)
Percussion – Kenneth Nash (8-9)
Saxophone [Tenor, Soprano] – Wayne Shorter (1-4)
Saxophone [Tenor, Soprano], Lyricon – Bennie Maupin (8-9)
Trombone [Tenor, Bass] – Pepo Julian Priester (5-7)
Trumpet – Freddie Hubbard (1-4)
Trumpet, Flugelhorn, Effects – Mganga Eddie Henderson (5-7)

Producer – David Rubinson
Recorded on June 29, 1976

1. Piano Introduction 4:32
2. Maiden Voyage 13:18
3. Nefertiti 5:17
4. Introduction Of Players/Eye Of The Hurricane 18:35
5. Toys 14:00
6. Introductions 1:47
7. You’ll Know When You Get There 7:00
8. Hang Up Your Hang Ups 11:54
9. Spider 10:12

The Crusaders Rhapsody and Blues

1980年の録音。Crusaders といえば、Jazz が付いた時代は別として 「Scratch」や「Street Life」が真っ先に浮かんでくるかもしれませんが、My Best はこれです。

なんと言っても、Soul Shadows ですね。Just the Two of Us でお馴染みの Bill Withers の vocal をフィーチャーした曲です。楽曲やアルバムの価値うんぬんという理屈はどうでもよくて、全体を通してリラックスした佳曲集といった趣きですが、クォリティの高さは太鼓判を押します。
バリバリの Jazz・Fusionでなく、ゆったりと寛ぐナイトキャップとしてのサウンドにはもってこいのアルバムです。でも、5.Last Call のように彼らの持ち味が充分に発揮されたものもあり、80年代の幕開け的な作品となっています。ちなみに表題曲のタイトルは、Gershwin の Rhapsody in Blue をもじったものです。

Joe Sample (Synthesizer, Keyboards )
Phil Upchurch (Guitar)
Roland Bautista (Guitar)
Paulinho Da Costa (Percussion)
Sheila E. (Percussion)
Wilton Felder (Bass)
Wilton Felder (Saxophone, Sax Alto. Soprano, Tenor)
Stix Hooper (Percussion, Drums)
Alphonso Johnson (Bass)
Abraham Laboriel (Bass)
Bob Mann (Guitar)
Robert Mann (Guitar)
Dean Parks (Guitar)
Ralph Rickert (Trumpet)
Greg Venable (Engineer)
Philip Upchurch, Sr. (Guitar)
Bill Withers (Vocals)

1. Soul Shadows
2. Honky Tonk Struttin’
3. Elegant Evening
4. Rhapsody And Blues
5. Last Call
6. Sweet Gentle Love

George Benson Blue Benson

どうして私のお気に入りのものはどんどん消えていくのでしょう?
残念ながら、このアルバムも今は入手できません。さわりの数曲はベスト盤で聴くことは可能だと思いますが、このラインナップぢゃないと意味がありません。

George Benson と聞いて「Weekend in L.A.」や「Breezin’」を思い浮かべる方が多いと思いますが、彼は私に言わせれば、Wes Montgomery と並び称される Jazz Guitar の巨人です。

1968年録音のこのアルバムは、Herbie Hancock、Ron Carter、Billy Cobham といった編成を中心に、ノリの良い 1. やアーシーな Blues 、お馴染みのヴォーカル曲などをたっぷり楽しめます。アタマの Billie’s Bounce を聴けば普通じっとしていることはできません。自然に体が揺れて足が動き出すはずです。Bluesナンバーも逸品揃い。Hancock の参加がアルバムの価値を押し上げていて、ある意味代表作と呼んで差し支えない出来です。それにしても上手いですねぇ… ホントもったいない。

George Benson (Guitar, Vocal) with
(1,2,4,6):
Herbie Hancock (Piano)/Ron Carter (Bass)
Billy Cobham Jr.(Drums)/Johnny Pacheco (Conga)
(3):
Paul Griffin (Piano)/Bob Cranshaw (Bass)
Jimmy Johnson (Drums)/Buddy Lucas (Harmonica)
Garnett Brown (Trombone)/Clark Terry (Trumpet)
Arthur Clarke, George Marge (Tenor Sax)
(5):
Bob Cranshaw (Bass)/Jack Jennings (Conga)
Jimmy Johnson Jr. (Drums)
(8):
Paul Griffin (Piano)/Leo Morris (Drums)
Chuck Rainey (Fender Bass)Jack Jennings (Vibes)
The Winston Collymore Strings
Arthur Clarke, George Marge (Tenor Sax, Flute)


 1. Billie’s Bounce 6:09
 2. Low Down and Dirty 8:36
 3. That Lucky Old Sun 3:45
 4. Thunder Walk 4:42
 5. Doobie, Doobie Blues 5:11
 6. What’s New 5:32
 7. I Remember Wes 3:55

Recorded February & November, 1968

Claus Ogerman & Michael Brecker City Scape

すみません。ご存じありませんよね? でも紹介させてください。

私も数々の音楽を聴いてきましたが、ハッキリ言います、これ自分のベスト5に入ってます。『なんで? ただのストリングス入りの企画盤でないの?』とおっしゃるんでしょうね、ちょい聴きのかたは。
『あそっか、Michael Breckerがやってるからねぇ〜』という、もはや偏見に近い見方もあるのでは?
断固として申し上げます。これを聴いて感動しない人は音楽というものを理解してない、と(言い過ぎです)。

騙されたと思って聴いてみてください、2.Habanera のリズムセクションによるストイックな中盤からラストへ徐々にテンションが上がっていく様を…(この間 Michael 抜きです、えっ?) 全体を覆う重厚とは言い難いけど絶妙な Ogerman によるアレンジが、古典音楽に慣れ親しんだ向きにも、すっと胃の腑に落ちる瞬間があるはずだと思うのですが。メインとなる後半は、これまた組曲風に Brecker の魅力を最大限に引き出し、尚かつストリングスの美しさを哀しく儚く表現した絶品となっています。

Ogerman はブラジル音楽の功労者なのですが、このアルバムのプロデゥーサー(プロデューサーは和風に読みすぎ)である Tommy Li Puma の要請で Michael Brecker とのコンビを実現し、このような傑作を誕生させたのでした。ジャケットは Li Puma 氏所蔵の亡命ウクライナ人画家によるものです。この作品の後にリリースされたアルバムも名作なのでいずれご紹介します。

(Sur Lie さん、必聴ですので是非レビューを!)

Claus Ogerman (arranger, conductor)
Michael Brecker (saxophone)
Warren Bernhardt (keyboards)
John Tropea, Buzz Feiten (guitar)
Marcus Miller, Eddie Gomez (bass)
Steve Gadd (drums)
Paulinho da Costa (percussion)

1. Cityscape
2. Habanera
3. Nightwings
4. In The Presence And Absence Of Each Other (Part 1)
5. In The Presence And Absence Of Each Other (Part 2)
6. In The Presence And Absence Of Each Other (Part 3)

Original Release Date: 1982

Claus Ogerman - Cityscape

Weather Report Heavy Weather

明けましておめでとうございます。
今年は本格的に、でもあくまで趣味に走ってのご紹介をやっていきたいと思います。

本年最初は Weather Report です。最も思い入れのあるアーティストは? と訊かれたら迷わずに挙げられるのがこの人たちです。追々その他のアルバムもご紹介してまいります。
このバンド自体のことは、ここで説明するよりWikiあたり(多少端折り気味な説明文ではありますが)をご参照ください。元々、Wayne Shorter と Joe Zawinul という二人のユニットが始まりのこのバンドは、bassの Miroslav Vitous を加えた三人が前期の中心で、私は今でもこの頃の演奏がより優れていると思っています。しかし、Black Market(1976)以降は John Francis Anthony Pastorius III(Jaco Pastorius)が参加するようになったことで、ファン層を拡大させRockやBlues系のミュージシャンにも大きな影響を与えるスーパーグループになっていった感があります。

さて、本作はその Jaco の名声を決定的なものにしただけでなく、セールス的にも成功を収めた有名なアルバムです。なぜこの作品を取り上げたかというと、やはり Jaco の演奏に尽きます。3.の「Teen Town」はbassの主旋律が有名ですが、drumsも Jaco が叩いており、彼のドラミングは’81年の来日公演のオープニング曲(8:30)の際にも観ることができました。卓越した音楽性は当時の音楽界全体にbassのあり方を覆すほどのインパクトを与えたと言えます。
特に、1.「Birdland」のメロディラインの聴きやすさに隠れた様々な音楽的テクニックは、1曲で何倍も美味しいということを気づいてもらいたいものです。実は「Rumba Mamá」以降の後半の楽曲にこそ、このバンドの神髄が現れていることを知らない人が多いのです。

Josef Zawinul: Oberheim Polyphonic synthesizer, Arp 2600 synthesizer, Rhodes electric piano, acoustic piano, vocal, melodica, guitar, tabla
Wayne Shorter: Tenor and soprano saxophone
Jaco Pastorius: Bass, mandocello, vocals, drums, steel drums
Alex Acuña: Drums, congas, tom toms, handclap
Manolo Badrena: Tambourine, congas, vocal, timbales, percussion

1.Birdland Zawinul 5:57
2.A Remark You Made Zawinul 6:51
3.Teen Town Pastorius 2:51
4.Harlequin Shorter, Zawinul 3:59
5.Rumba Mamá Acuna, Acuna, Acuña, Badrena 2:11
6.Palladíum Shorter 4:46
7.The Juggler Zawinul 5:03
8.Havona Pastorius 6:01

Wynton Marsalis Live at Blues Alley

どうでしょう、決定版と言っていいと思います。トラディショナルジャズへのリスペクトが頂点に達し、有り余るテクニックを思う存分発揮した天才ウィントンの最高傑作です。

ワシントンD.C.にある「Blues Alley」に行ったのは1990年頃だったと思いますが、私が観たのは organ の Joey DeFrancesco のグループと、失念してしまった驚異的な女性 vocalist でした。それより、本作のライブがここで行われていたことを思うと感慨深かったのを思い出します。

彼の故郷である New Orleans に(十数回は行ってるので多少ガイドできます)「Snug Harbor」というクラブがあるんですが、彼のお父さん(Ellis)が定期的に出演しています。今でも活動されています。ここでは、南部のディープなサウンドがジャズだけでなく、ゴスペルのおばさんの強烈な歌声が店を壊すかのごとく鳴り響いていたりします。あの New Orleans の様々な歴史やサウンド(Second LineやCajunやZydeco)が、ジャズの優等生である Wynton のエッセンスとなっているのは間違いありません。

本作では、前半の「Juan」から「Cherokee」につながる部分を聴いていただければ、この Quartet の神髄を多少はご理解頂けると思います。盲目の Robarts による間合いを聴くだけでも鳥肌が立ってきます。やっぱりジャズは実演がいいです。その時の音と息吹きが。
レコードとCDへの移行の過渡期にあった当時(1986年)、Wynton はレコード発売を拒否してCDのみでの発売に固執したことも特筆すべきことでしょう。

Wynton Marsalis (trumpet)
Jeff Watts (drums)
Robert Hurst (bass)
Marcus Roberts (piano)

Disc: 1
1. Knozz-Moe-King
2. Just Friends
3. Knozz-Moe-King (Interlude)
4. Juan
5. Cherokee
6. Delfeayo’s Dilemma
7. Chambers of Tain
8. Juan (E Mustaad)
Disc: 2
1. Privave
2. Knozz-Moe-King (Interlude)
3. Do You Know What It Means to Miss New Orleans?
4. Juan (Skip Mustaad)
5. Autumn Leaves
6. Knozz-Moe-King (Interlude)
7. Skain’s Domain
8. Much Later

Blossom Dearie Give Him the Ooh La La

言い訳です。このサイト、基本的に名盤紹介するつもりではありません。独断と偏見に満ちたピックアップ集ですので、清きお心からのご期待には添いかねますことを予めご了承ください。

Vocalなのに「エラ、サラぢゃないのか…」というお声はあるかもしれませんが、わたくし的に思い出深い作品の、いわば『備忘録』のようなものですのでお許しください。


誰? これ という方がほとんどと思います。「ブロッサム・ディアリー」という女性歌手で、『元祖カマトト・ヴォイス』などと呼ばれます。聴いていただかないと評価しようがないので、USのamazonのサイトで視聴願います。やはり10代の後半に出会ったんですが、今でいう『萌え〜』でしたね、あの時の気持ちは。こちょばゆいです、今思い出しても。


さて、この人は New York 生まれですが、歌手になった後に Paris へ行って活動したので、フランス語がとっても上手でした。このアルバムだと、Plus Je T’enbrasse という曲でよく分かると思います。シビれます。ホントに(照;)。田舎者の高校生が毎晩聴いては『萌え〜〜』と言ったかどうかは定かではありませんが、一緒に聴いていた弟はもう少し冷静だった気がします。

残念ながら、彼女は今年(2009年)2月に亡くなってしまいました。享年82歳。合掌

Blossom Dearie – vocals, piano
Ray Brown – double bass
Jo Jones – drums
Herb Ellis – guitar

1."Just One of Those Things" (Cole Porter) – 2:03
2. "Like Someone in Love" (Johnny Burke, Jimmy Van Heusen) – 4:33
3. "Between the Devil and the Deep Blue Sea" (Harold Arlen, Ted Koehler) – 2:28
4. "They Say It’s Spring" (Marty Clark, Bob Haymes) – 3:46
5. "Try Your Wings" (Michael Preston Barr, Dion McGregor) – 3:26
6. "Bang Goes the Drum (And You’re In Love)" (David Heneker) – 3:24
7. "The Riviera" (Cy Coleman, Joseph Allen McCarthy) – 3:48
8. "The Middle of Love" (Benny Goodman, Jimmy Wallington) – 2:35
9. "Plus je t’embrasse" (Ben Ryan, Max François) – 2:31
10. "Give Him the Ooh-La-La" (Porter) – 2:41
11. "Let Me Love You" (Bart Howard) – 2:44
12. "I Walk a Little Faster" (Coleman, Carolyn Leigh) – 4:18

John Coltrane The Other Village Vanguard Tapes

10代中頃になると小遣いを貯めては上京し、ジャズ喫茶で4〜5時間ジャズのお勉強に勤しんだ後にレコード店回りをしました。
当時は、新宿の「オザワ」や「Disc Union」、電脳街になるずっと前の秋葉原では「石丸電気レコードフロア」などが中心でした。掘り出し物は「オザワ」で、品数で勝負は「石丸」でという感じ。「石丸」は、大きなフロア毎に各ジャンルで分かれていたので、〜階は全部ジャズというふうにおびただしい数のレコードで埋め尽くされ、ヨダレを拭いながら血眼になって1枚1枚抜き出しては内容をチェックしたものです。

ある時、駅前のラジオ会館の一室でジャズレコードの輸入盤市が催されるのを聞きつけ、覗いた際に見つけたのが今回取り上げる作品です。
2枚組のくせに上からプレス機にかけたようにシュリンクラップされペッタンコになり、輸入盤独特の糊のニオイを放っていました。沸き立つ思いを抑えつつ、鈍行電車に2時間余り揺られて帰宅するや固唾を呑んで針を落とした次の瞬間に全身が逆毛だったことを記憶しています。
Chasin’ The Traneの凄まじい迫力、Coltrane、Dolphyの狂気にも似たインプロヴィゼーション、怒濤のリズム隊が渾然一体となって襲いかかってきます。聞き終わった後は放心し、ふぬけのようになっていたと思いますよ、たぶん。Coltraneもくったくたになっていて目が泳いでいたかもしれません。
ライブ録音自体は既にリリースされていたものですが、タイトル通り別テイクが存在していてそれをまとめたのが本作です。興味のない人にとっては騒音でしょうね、きっと。Village Vanguardってどんなスゲェとこなんだろう? と少年は全く手がかりがないまま想像を膨らませていた頃でしたが、のちに何度も足を運ぶとは夢にも思いませんでした。

残念ながら、本作も手に入ることはないでしょう。1961年のこのライブ自体は数枚に分かれて現在でも入手可能ですが、この構成が私はベストだと思うので。

1.Chasin’ The Trane (9:51)
2.Spiritual (12:40)
3.Untitled original (18:40)
4.India (15:25)
5.Greensleeves (6:18)
6.Spiritual (20:32)

John Coltrane tenor and soprano sax
Eric Dolphy bass clarinet ( On Track 2 Only )
Jimmy Garrison bass
McCoy Tyner piano
Reggie Workman bass
Elvin Jones drums

Recorded Nov 2,3,4,5, 1961 at New York City