Chick Corea Return To Forever

なんだ、メインストリーム・ジャズはどうしたんだ?
と言われそうですが、今しばらくお待ちを。

例えば、政権が変わるというような待ち構えて行われる変化には、人は順応というかそれなりの対応ができると思いますが、予想しえない変化には拒否反応を示す方も多いようで。

この Return To Forever は、ジャズ愛好家にとってはまさに賛否両論、ボロくそ派と待ってました派の真っ二つに分かれた作品といえます。

まず第一に、Chick Corea のルーツ的なスパニッシュな味付けであり、玄人好みする難解さを極力抑えた曲調であり、Flora Purim(drumsのAirto Moreiraの奥さん)の歌い方であり、結局何もかもダメな人と良かった人に評価が分かれました。

私は、聴いた瞬間から虜になったサイドにいましたので、わぁわぁ騒ぐ人らの意見は民主主義的に「そういう考え方もありますね」という解釈というか、無視してました(笑)。理論的にどうであっても楽しめない音楽は自己満足でしかありません。

さて、本題です。例えば、「Sometime Ago / La Fiesta」の最初の印象は、私に言わせればプログレッシブロックの大作のような展開? とこういう感想でさえ『けしからん!』みたいな反動がありましたが、正直どんどんテーマを昇華しながら曲調に乗って高揚していく演奏に「どう? こういうの気に入った?」と言わんばかりの挑発的な視線を感じるところが最高です。…分かりづらいですね。

次作の『Light As A Feather』で発表される名曲「Spain」につながる大胆なラテン風味を散りばめて、Corea 自身もそれまでの代表作である『Now He Sings, Now He Sobs』のような上手なピアニストってだけではない、非凡な才能を世に見せつけた傑作です。私は今でも世界一のピアニストは Chick Corea だと思っています。
ちなみにamazonの方のジャケ写ではなく、「ECM」が中央にあるのがオリジナルです。

Bass, Double Bass – Stanley Clarke
Drums, Percussion – Airto Moreira
Electric Piano – Chick Corea
Flute, Saxophone [Soprano] – Joe Farrell
Vocals, Percussion – Flora Purim

1.Return To Forever 12:06
2.Crystal Silence 6:55
3.What Game Shall We Play Today 4:26
4.Sometime Ago / La Fiesta 23:18

チック・コリア - Return to Forever

Pat Metheny Group First Circle

人は皆、聴くだけで想い出の風景やその季節、忘れることのできない人やその時に感じたニオイまで、様々な記憶が蘇る楽曲というのが1曲くらいはあるのではないでしょうか。私にとっての First Circle という曲もそういった存在です。

Pat Metheny は たぶん、自分が本当にやりたい音楽だけを作って商業的にも成功している数少ないジャズミュージシャンの頂点でしょう。彼が大きな成功を収めたのは、David Geffen のレーベルに移籍してからとなりますが、ECM での最後の録音となる本作が私は最高傑作の本命,移籍後の「Still Life (Talking)」は作品としては別格というか、もはや奇跡です(いずれPick Up予定)。

どうしてこんな純粋に心に響く曲が創造できるのだろう、という言葉ですべてを言い表せますね。ECM レーベルの個性である透明感のあるナチュラルな空気感、彼の楽曲に共通する牧歌的な詩情あり、2.や表題曲に感じられる独特の躍動感は Pat Metheny たるゆえんなのです。聴くたびに心に染み入ってくるのが分かります。

このブログのプロフィールにも書いたように、New Yorkで彼と二人で撮らせてもらった写真は私の宝物です。

1.FORWARD MARCH    (Pat Metheny)    2:47
2.YOLANDA, YOU LEARN    (Pat Metheny/Lyle Mays)    4:43
3.THE FIRST CIRCLE    (Pat Metheny/Lyle Mays)    9:10
4.IF I COULD    (Pat Metheny)    6:54
5.TELL IT ALL    (Pat Metheny/Lyle Mays)    7:55
6.END OF THE GAME    (Pat Metheny/Lyle Mays)    7:57
7.MAS ALLA (BEYOND)    (Pat Metheny, lyrics by Pedro Aznar)    5:37
8.PRAISE    (Pat Metheny/Lyle Mays)    4:19.

Arrangements by Pat Metheny and Lyle Mays

PEDRO AZNAR — voice, percussion, bells, glockenspiel, acoustic guitar (nylon), whistle, acoustic 12-string guitar
LYLE MAYS — piano, synthesizers, trumpet, Oberheim, agogo bells, organ
PAT METHENY — guitar, Synclavier guitar, sitar, slide guitars, acoustic guitar (steel string), guitar synthesizer, acoustic 12-string guitar
STEVE RODBY — bass guitar, acoustic bass, bass drum
PAUL WERTICO — drums, field drum, cymbal

 

SHM-CD

The Three

レコードで手に入ったのが、80年代初めまで。CDに至ってはリリースされていたことも気づかなかったほどです。とにかく、Satin Dollが絶品です。私のこの曲の絶対的な基準はこのアルバムなので、これと同等か、これより劣るかしか他にありません。

なぜ、これほどまでに優れた演奏が評価されないのかが不思議でなりません。世のジャズ通と自称する方にハッキリと進言します。これ聴いてください。

とはいうものの、現在はおそらく入手できません。CDリリースも僅かな期間で今でも in store なところはないでしょう。

私は、LPは持っていましたが遙か昔に人手に渡り、たぶん20年くらいは寂しい思いをしていましたが、幸いなことに最近になって中古盤CDをマーケットプレイス経由で手に入れることができました(送料込みで2,840円)。

セカンドカットのようで、各曲の頭に少しノイズが乗るんですが、それでもあの素晴らしい演奏が聴けるだけで何も言うことはありませんでした。もし、どんな形でも手に入る可能性があったら、必聴です。これもEast Windの作品です。

Joe Sample (Piano)
Ray Brown (Bass)
Shelly Manne (Drums)

Recorded Nov. 28, 1975

Side A
1 Yearnin’  (Nelson)  5:08
2 On Green Dolphin Street  (Kaper, Washington)  5:19
3 Satin Doll  (Ellington, Strayhorn, Mercer)  5:43

Side B
1 Manha Do Carnaval  (Bonfa,Maria, Llenas)  6:02
2 ‘Round About Midnight  (Monk, Williams, Hanighen)  4:37
3 Funky Blues  (Sample, Brown, Manne)  5:13

Singers Unlimited Christmas

もう今年は間に合わないかもしれません。このアルバムは、私の大好きなア・カペラグループのクリスマスソング集です。

初めて聴いたのは、12歳頃でしたか 確かラジオで流れていたと記憶しています。その時に耳に入ってきた『Silent Night』がそれまでお馴染みだった「きよしこの夜」とは圧倒的に違うことを田舎のガキんちょは思い知ったのでした。

細部まで計算し尽くされたコーラスと荘厳ささえも感じさせるアレンジ。宗教的なバックボーンなしに聴くのが憚れるくらい気後れしてしまった印象を今でも覚えています。

高校生になって、裕福な友人宅で高級オーディオにコンデンサ・ヘッドホンという組み合わせで聴かせてもらったことがあります。まるで大聖堂にいるかのような効果に頭がクラクラするようでした。

とにかく、ご存じでなかったら一度お聴きください。こっそり季節外れにヘッドホンで聴きたくなる私の気持ちがお分かりになるはずです。iTunesで購入できます。

Christmas - The Singers Unlimited

Great Jazz Trio At The Village Vanguard Vol.1

高校時代、それまで名盤を聞き込むことに時間を費やしてきた中で、臨場感というものを味わうような音に巡り会わなかったわけではありませんでしたが、Rudy Van Gelder による Englewood Cliffs でのリバーヴの効いた Blue Note レーベルのサウンドこそがジャズや! ファンキーや! ハードバップや! と思い込んでた耳に、ライブ録音の新鮮な躍動感がいかに爽快な青春のカタルシスをもたらすか、を実感したアルバムがこれです。

GJTの誕生は、鯉沼さんを始めとした EAST WIND レーベルの吟味の結晶であり、日本発の日本人が愛してやまないジャズ製作の形として日米の一流ミュージシャンを起用した極めて完成度の高い演奏を提供する金字塔となった企画でした。

後年、私が運営に携わったジャズクラブに Hank Jones が出演してくれた際に言っていた、
「70歳を過ぎた今も、1日練習をサボると自分で分かるし、3日やらないと妻が気づく。1週間だとお客さんに分かってしまう」
という言葉。そんな信念をもって音楽と向き合っているんですね。

Parkerの1. のっけから『ピアノトリオ斯くあるべし』といえる好演となっています。

Hank Jones  (Piano)
Ron Carter  (Bass)
Tony Williams  (Drums)

Recorded Feb. 19-20, 1977

1 Moose the Mooche  (C.Parker)
2 Naima  (J.Coltrane)
3 Favors  (C.Ogerman)
4 12+12  (R.Carter)

ザ・グレイト・ジャズ・トリオ - アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード

伝えたい音

中学生時代からのジャズ好きが高じて、後にジャズライブハウスを運営したり、ミュージシャンのマネージメント等も手がけることになりましたが、そうした時代から幾年月…

今では何が流行っているのか、業界はどうなっているのか、はたまた偉大なあの人はまだ生きているのか、ほとんどわからないまま。
『そんな古くさいの、どこがいいの?』
かもしれないけど、やっぱり今時の世の音楽に身を委ねる気になれない。

何であんなに真面目に音楽に向き合っていたんだろう、何をもってあれほどの情熱を注ぐことができたのだろう?

今では、TVでもFMでも、そんな私たちの疑問や欲求に応じてくれる場所はない。ネットで探す? ありかもしれないけど…

だったら、作ろうぢゃないか そんな人たちが幸せになれる場所を。そして、幸せになれる音楽を紹介しあえることができたら…

以上、えらそうな主旨ですが少しづつ内容を充実させていこうと思います。