
そろそろ出さないとしょうがないので出すとしましょう。
かつて『Jazz Life』という雑誌で Miles Davis へのおそらく世界中で最後のインタビューとなった記事があり、取材を受けた Herbie Hancock が次のようなことを言っていました。
「1960年代後半のある日、Boston でのライブの前に僕は悩んでいた。いい形でソロを終わらせるにはどうしたらいいか。それを Miles は見抜いていて、ひとことこんなことを僕に言った。『バターノートを弾くな』 …言われた当初は何のことだか分からなかった。しばらく経ってから『Butter Notes』というのは、スケールやコードの中の豊かな部分、つまり、『おいしい音なんか弾くな』という意味だと分かった。」
Miles Davis という人は誰よりも音楽理論に精通していて、クールなサウンドとは何か、時代を創り出す演奏はどんなものか、を真に予知していた類い希な芸術家と言えるでしょう。数多ある作品の優劣を付けることはもはや不可能ですし、ここは好みで選びました。
本当は「Kind of Blue」を登場させようと思いましたが、あまりにも名盤過ぎるのでやめました。本作は、1967年録音の Davis が Electric を導入する直前の姿を捉えた重要なアルバムです。作曲の主導権を Wayne Shorter に任せ、Shorter が気合いを入れて用意した楽曲を中心に黄金の Quintet と言われた面々で録音されたものです。
表題曲からして、同じテーマを延々と繰り返すスタイルに Jazz を聴き始めの向きには少々敷居が高い趣ですが、このスタイルが当時のありきたりな演奏をせせら笑うかのような実にインテリジェントな風情を醸しだしています。こうしたテンションの高いナンバーに続いて、3.Hand Jive に辿り着くと、そこには Tony Williams が率先して他のメンバーをぶん殴るかのような極めて攻撃的な世界が繰り広げられます。うるさ型にはこのアルバムにこの曲は不要だと言い放つ向きもあるようですが、私はこれを聴きたいがために本作を聴いています。ここでの Williams のドラミングはすべての流れを作り出しており、各人のソロパートを先導する強力な推進力を発揮しているところにゾクゾクさせられます。
最後に Davis のインタビューにあった印象的なお話を。
『あれは Tony が、誰だったか… Freddie Hubbard だったと思うが trumpet のソロの途中で drum を叩くのを止めちまったんだ。手を下ろしちまった。こんなソロのために叩くのはゴメンだ、という意味だなあれは。Tony ってヤツはそういう男だ。』
18歳で Miles Davis Quintet のメンバーに抜擢された Tony Williams 1997年没。52歳の若さでした。
Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b)
Tony Williams (ds)
1. Nefertiti 7:55
2. Fall 6:39
3. Hand Jive 8:58
4. Madness 7:33
5. Riot 3:05
6. Pinocchio 5:09
あ~!なぜ今までMILESを聞かなかったのだろう!
カチンカチンのイメージがあったのです。
イメージだけです。
このなんとも言えないエキセントリックな雰囲気!
一音で引きずり込まれました。
ドラムスの人、ほんとにいいですねー
そらみみさん
聴いていただいたようで。
この線がお気に召すのであれば、直前の「Four & More」…ちょっと違うかな、直後の Electric 一発目の「Miles in the Sky」、それと「In a Silent Way」は気に入ってくださると思います。
Cat’s-Pawさん、こんばんは。
ご紹介していただいた、最初のエレキ
「Miles in the Sky」いってみました。
Harbie Hancock のエレピはまだタルタル。
Milesの曲は長いだけであまり面白くありませんでした。
逆に Wayne Shorter の作曲能力の凄さが判りました。
Tony Williams はあいかわらずイイデスね!曲もなかなかです。
「Paraphernalia」の George Benson の雰囲気作りもナイスです!
しかし、すごい(ほめ言葉でなく)ジャケットですね!
ガキの頃にそっくりの絵を描いた記憶があります。
ひょっとしてこのジャケットをどこかで見ていたのかも?
そらみみさん
このジャケット、私も好きです。グラフィックデザインの仕事もしていたので引きつけられます。
仰る通り、Shorter は後年WR以外に若手ミュージシャンのプロデゥースをいくつも請け負いますが、すべてにおいて非凡な才能を発揮するんです。主なものは廃盤になってしまってますが。次々回にご紹介する予定です。
そらみみさん
各々の楽曲への印象はその通りかと思いますが、この時点での音楽シーンへの影響は結構計り知れないものがあったのです。
Jazzへの明確な8ビートの導入もそうですし、これがなければ George Benson のその後もなかったかもしれません。そういう意味で画期的な作品と言えると思います。
「In a Silent Way」はそらみみさんには私として確認のつもりで提示してみました。これをどう評価されるかである程度の嗜好性を判断できるかなと。
コメントありがとうございます。
「In a Silent Way」少し間をあけて購入してみたいと思います。
なんせ、今年1月~3月だけで、3年分ぐらいCDを買ってるので・・・
ちょっとペースを落としますね。
Cat’s-pawさん、ご無沙汰いたしました。
満を持して「In a Silent Way」を購入しました。
偉大な足跡なのでしょうが、正直申し上げて良く判りません。
前衛に意味を求めるのは間違っているかもしれませんが、
何を言わんとしているのか、はたまた言う意思があるのかが
良く判らないのです。
演奏も、いまひとつしまらない音で、特にJohn Mclaughlinの
ギターのタルタルさは勘弁してほしい感じです。
作曲も、Miles Davis の長い曲はやはり面白くないです。
J.Zawinul作曲「In a Silent Way」は、おそらく影響を受けた
ミュージシャンが沢山いるのではないかという一味違うものを
感じます。
そらみみさん
10代の頃の私の第一印象もほぼ同じ感想でした。「Shhh/Peaceful」については、後に John Coltrane の「A Love Supreme」やDavis の「Bitches Brew」を聴いてから割と身を任せられるようになりました。
おそらく、こうした時代背景も影響しているかも知れません。情報が稀少だった少年の頃に偉大と言われる演奏を盲目的に聴き尽くすような経験をしたせいで、多少なりとも刷り込まれた面もあったでしょう。
Davis の40年代(クール)、50年代(モード)、60年代(フリーブローイング〜エレクトリック)、70年代(ロック)というように変遷する音楽を咀嚼することが当時の命題と捉えていたフシもあります。
しかし、なぜウィーン生まれの Zawinul 作の叙情歌とも取れる「In a Silent Way」が表題曲として取り上げられたのかを考えた場合、間に包み込まれた「It’s About That Time」の緊張感との対比で ambient 的な方向性を打ち出したかったのかなぁなどと自分なりには解釈しています。それが万人に面白いかどうかは別にして、当時息咳き切って聴きまくっていた頃の自分としてはトータルな音楽芸術という受け止め方をしていたわけです。
ご提示させていただいた立場で恐縮ですが、たぶんその辺の原風景の違いが印象に反映しているのではないかと思う次第です。