あの瞬間

生涯初めて地震の本当の怖さを実感しました。誤解を恐れずに言えば、これまで自分が経験した地震でうろたえた記憶はほとんどありません。何の根拠もなく、「今のは結構大きかったな」などと思うだけで、テレビ番組に入るテロップが鬱陶しいなぁ、と実感もなく無責任な気持ちでいたことも少なくなかったと思います。しかし、身内にも阪神淡路大震災で被災した者がいて、当日のテレビであのおぞましい光景を見た時、全く電話が通じず途方に暮れるような時間を過ごした経験もあるのに、その後は喉元過ぎれば・・・の喩え通り安穏と構えていたのです。

昨日の最初の予震の時、ゆらゆら揺られながら「このあいだと同じでイヤな感じだな」とシーリングライトの紐の動きを見つめていると、次の瞬間操作盤のスライドスィッチをぐいと押し上げるにも似た出力の上昇を感じて思わず向かっていたMacのシステム終了を選んでいました。
『この書類は保存されていません 保存しますか?』
どっちのボタンが保存だったか迷い、えいっとリターンキーを叩き終了プロセスがいつも以上に長いことに軽く苛つきながら、コンピュータの筐体とすぐ右にある窓のレールを掴んで力一杯押さえ込みました。

直前に二階から下りてきたぼぎが、うわ〜んうわ〜んと泣き叫び、目を剝いて床に這いつくばる。家のあちこちでバタン、ゴトンという音がして外の少し離れたところから子供の大きな声が聞こえた時、なぜか Pink Floyd の Final Cut に出てくる効果音を思い出して「この後砲撃の爆音が響く」と確信しつつも相変わらず続く激しい揺れに「もう収まってくれ!」と叫んでいました。

最初の長い一波が引くのを待って、ガムテープを取り出し二階に上がって液晶テレビの台座を留めようとしてもうまくできません。ハッと気がついてコタツの中を覗くとネコたちが全員怯えた表情でこちらを見ました。「そこにいろよ」やっとテープで留め終えて、次の行動を考えた時に自分が冷静さを失っていることを認識しました。寝室や浴室に異常がないか確認して一階に戻ると、第二波が来てまた押さえるを繰り返す。

実際はもっとオロオロしていたに違いありませんが、思い出すだけでも体が揺れ出すようなおかしな感覚に陥ります。

亡くなられた方のご冥福をお祈りし、行方不明者の一刻も早い救出を願います。

10件のコメント

  1. 私の住む岡山でも、揺れました。
    いま、相馬の知人がどうしているか、不安でたまりません。被害の実態が明らかになるのが、本当に怖いです。
    とにかく、今回被害に遭われた皆さんに、心からお見舞いを申し上げます。

  2. ラミーさん
    Twitterで連絡がとれたとのツイートを見ました。まずは良かったですね。
    一体、今どれだけの人たちが安否を気づかい、救出を待っているのか…

  3. お怪我もなく猫ちゃんたちもご無事で何よりです。
    連絡の取れなかった兄とは今朝になってようやく
    連絡が取れました。
    兄や甥は都内の勤務先から千葉まで歩いて帰った
    ようです。
    悲しい災害。
    私たちは何ができるのでしょう。

  4. 皆様ご無事で本当に良かったです!!
    ボギーがあんなにビビるとは。かわいそうに、怖かったんでしょうね。
    いや、本当に怖かったです。
    阪神大震災を大阪で経験した私ですが、「できることは」のページを読んで、湯船に水を入れてご飯炊きました。アドバイスありがとうございました!
    被害にあわれた方にお見舞いを申し上げ、これ以上被害が出ないことを祈ります。

  5. ふうさん
    お兄さんと連絡が取れて本当に良かったですね。
    私の弟も11日は丸の内から駒沢まで徒歩で帰り着いたそうです。
    電力不足が深刻化してます。東電は計画停電を実施すると発表しました。
    今できるのは無駄な電気を使わないこと一番のようです。

  6. Jill Miaさん
    「できることは」は、完全な受け売りです。被害が少なかったり無事だったエリアの人ができることは確かに限られますから、先の震災の経験から導かれた教訓は貴重ですね。
    Jill Miaさんのも含めツイートされた情報も大変役立ちます。
    まずは節電に協力しましょう。

  7. >これまで自分が経験した地震でうろたえた記憶はほとんどありません。
    >何の根拠もなく、「今のは結構大きかったな」などと思うだけで
    >番組に入るテロップが鬱陶しいなぁ、と実感もなく無責任な気持ちでいたことも
    私もまったくもってその通りでした。今までは。
    地震の恐ろしさは知っていても、地震を恐ろしいと‘感じた’ことはない。
    それが一昨日、初めて揺れてる最中に地震を怖いと感じました。
    ・・・・そうでしたか、ボギーは床に這いつくばりましたか。
    うちは2匹ともバラバラに走り回った末、揺れで開いた窓から逃げ出し、
    本当に心臓止まる思いました(怖)
    非常時、猫をどうするかの手順をもっときちんと考えておかねばと猛反省です。

  8. miruraさん
    アイちゃんのいた場所のくだりを読んで、私も心臓が止まりそうになりました。そちらは10階の高さです!
    皆さんご無事で何よりでした。
    夕べ家族会議(?)を開き、災害で逃げる時に少しでも時間があれば稼働していない厨房のコールドテーブルの冷蔵庫に通気を確保しておいて、ニャンズ全員を閉じ込め、後で救出したらどうかとか話し合いました。ただ火災が起きたらダメなんですが、家屋が倒壊してもおそらく壊れずに居られる場所です。
    ケージに入れて一緒に逃げ出すには現実的ではない頭数だと思うんです。

  9. テレビから流れてくる被災地の映像を見ていると本当に心が押し潰されそうになります。
    少しでも多くの方々の無事を祈ることしかできません。
    私の住む東京もかなり揺れました。
    鉄筋コンクリのマンションの壁がボロボロと崩れてきて、「潰れてしまうのではないか」という恐怖に襲われました。
    我が家は、人間1人、猫5匹(そのうち1匹は足に障害があります)。ケージに入れて逃げようにも不可能だと今回のことで思い知らされました。
    災害時に彼らを安全な場所へどう避難させるか、我が家でも大きな課題です。

  10. とんちゃんさん
    そうですよね。例えば夫婦二人と2匹なら、一人づつケージを1つ持って着の身着のまま出ていくというのはあり得ますが、5匹ではたぶん二人でも難しいだろうし、とんちゃんさんお一人では不可能でしょう。
    その上、非常時にケージに入れられるかはもっと難しいと思います。
    大変悩ましい問題に気がついてしまいました。

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