Appleのこと

Appleの経営陣が変わりました。
私はつい最近まで同社のコンピュータを10年余に渡って修理する仕事をしていました。

そもそも、元々飲み屋のおやじだった身で、離職後にデザイン会社を共同で立ち上げたのがMacとの出会いでした。それまではCanonのワープロ専用機くらいしか触ったことがなかったのに、最初見慣れないデスクトップ画面に戸惑っていたことを覚えています。

今では信じられませんが、13インチのCRTディスプレイに写真画像が表示されるのを見て感動したものでした。アプリケーションソフトというものが存在し、パソコンでそれを使って業務が効率化できるなんてことをまさか自分が目の当たりすることになるなどとはその時まで想像すらできませんでした。文系の私は、Appleの歴史を飾る初期の名機などは全然知らず、最初に出会ったQuadra 700(会社のパートナーの私物。周辺機器やDTPアプリ合わせ200万ほど)に魅せられ、当時たった25MHzしかなかったCPU、4MBのRAMを20MBに増設するために10万円近くかかったメモリ代の高さにも拘わらず、トータルではMac自体に人類の未来を感じていました。

その後何を思ったか、時々遭遇する爆弾マークに妙な好奇心を覚え、原因は何なのかを考えることが最大の関心事になっていきました。Niftyのパソコン通信や創生期のインターネットを駆け巡って情報を探し、自己流ではあるものの、次第にトラブルへの対処法を身につけて行ったわけです。凝り性といえばそうなので、徐々に事務機販社などから顧客対応を依頼されるようになり、その後正規サービスプロバイダの中で大手広告代理店の常駐保守などを経てApple認定技術者として広く仕事をしてきました。

どちらかというとMacに思い入れがあったため、トラブルに憤っている人を見ると「そう使うようにはできていないんだけどなあ」とか、「バグだから大騒ぎしても仕方ないのに・・・その機能使わなけりゃいいだけだよ」なんて思いつつ、直る見込みのないものは直すフリをしたりしたこともないわけではありません。
仕事の道具なので使えないと意味がないのは尤もですが、オートメーションのロボットぢゃないんだから遭遇した不具合を回避して作業続けるくらいちょっと考えたらどうかと思うこともしばしば。

例えば、今自分でも困っているSnow LeopardとLionでも起きているSafari5.1での検索窓に日本語が入らなくなるバグ。イライラします。ATOKも関係なさそうだし、考えられるとすれば悪名高いFlashしかないと思いますが、AdobeのFlashをこの世から抹殺したいAppleの作戦かどうかは不明なものの、仕方ないので別のブラウザ使うとか、現実にはWebkitのNightly Builds(Safariのオープンソースコミュニティがリリースする開発版)で回避してます。ここまで広範囲に知られた限りはバグなんですよ、どっちかの。だから修正されるまではジタバタしてもしょうがない。それなら問題のない別のブラウザ使うしかないでしょう。

私はAppleの事業の中心がiPhoneやiPadといったモバイルに移行したのは、単に時代の趨勢を先読みしたとか革新的なデバイスだからとかという理由ではなくて、OSを他社の不本意な技術に影響されず、自らが純粋にコントロールできる安定を提供するための手段ではなかったかと思っています。
つまり、Androidのようなオープンな環境は確かに素晴らしいが、『採用した各社の開発者が全部責任とってね』という手法はとらず、『全責任は自分たちがとるのでアプリは審査するよ、そのかわりアブナイものはブロックします』とでもいえる姿勢でしょうか。世界で唯一ソフトもハードも自社製造という立場を最大限に生かそうという優位性かもしれません。

Jobsが戻ってからのAppleは一貫してこのような思想を持っていたと思います。私自身、そのあたりに共鳴したことで、とっ散らかったようなWindows OSの見苦しいフォントや一貫性のないインターフェイスに嫌悪感を覚えてしまったのは間違いありません。Adobeがユーザを置き去りにしてだんだんゼネコンみたいな商売の仕方になってきたことも同様の違和感を感じます。だいたいFlashなんて言ってみればホウキにモーター付けてホースをつなぐとこんな便利になりました、みたいな存在に見えます。つまり、もう時代遅れなわけです。危険な付属品などなくても家自体にHTML5という道具があるのにというのが私の考えです。

話が逸れましたが、Appleの今後というのはメディアが騒ぐほど悲観しなくていいと思います。
Steven P. Jobs一人のチカラですべてが成り立っていたわけではないでしょう。だいたい本人が社内に留まると言っているのに、まるで死んでしまったかのような報道が多すぎます。
Appleの製品が優れているというよりは、他社の製品がお粗末なだけなんですよ。私自身、携わったインターナショナルなサービスの部門のシステムを経験してみて、ハードとOSの両方から考えられた修理マニュアルというのは他社にはマネできない強みであると言えます。かなり頑固な運営の仕方に困らされた経験も少なくありませんでしたが、技術者にとっては判断しやすい環境を与えてくれるのがAppleでした。

6件のコメント

  1. ごっ御免なさい!
    なぜか今の今までcat’s-powさんのことを女性だと思ってました。「私と同じ様なお酒好きの女性がいるんだなあ」と、嬉しくなってましたが、なんと男性だったのですね!いえ、勝手に勘違いしていた私が悪いのです。
    そう言えば、あの骨太のジャズの好みはあまり女性っぽくは無かったかも…。
    何か、理由はよく解らないけど、嬉しくなってきました。これからもコメさせて頂きますので、宜しくお願いします!

  2. ひろみ@49さん
    いや、こちらがビックリしました。何でですかねぇ、文体がですか?
    ジャズはすっかりサボってますが、ご紹介したいものはまだまだ沢山あります。
    こ、こちらこそ、よろしくお願いします。

  3. ありがとうございます!!
    Safari5.1のバグで8月の中頃から困っていました。この記事を読んで、リンク先を旦那に見せて、さっそく5.0.5に戻してもらいました。(バグの状況を的確に説明できないへっぽこユーザです、わたし。)
    その旦那がMac大好きで、最初はお下がりのMacでした。仕事上仕方なくWindowsを使ったこともありましたがいつも画面に向かって怒鳴っていました。私にはWinは精神上よくないみたいです。また、Mac情報がありましたら教えてくださいね。

  4. りんグ〜さん
    そうですか、少しはお役に立てましたか。
    私はとにかくFlashが消滅して欲しいです。
    Safariはバージョンに関係なくFlashが生きてるとメモリを天井知らずで喰っているんですよ。
    OS10.6ではSafariだけで1GB以上になることがあります。
    Flashを外すとその3/1以上にはなりません。これは害以外のものではないです。とにかく早くなくなって欲しい。

  5. 我々の世代には大きな存在、カリスマですね。 留学時代、彼らのガレージを探したことも(汗)
    http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/2426/trackback
    まだ日本語環境がない時からの、PlusやSE30時代からのユーザーですが機械そのものについての知識はなく、単に道具として使っているだけです(汗) 
    ただ、彼らのJobsらの生きざまが、カッチョイイイ〜〜と思っていました。
    http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/1237/trackback

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